<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の立地と地域共生
<タイトル>
原子力施設立地と地域共生 (02-02-01-05)

<概要>
 原子力施設の立地を円滑に進めるために電力会社など原子力事業者は、立地地域へ様々な貢献を行っている。また、国レベルでも地域振興施策として公共用施設の整備などが講じられている。最近では、公共施設整備などのいわゆるハード面での支援だけでなく、立地地域の実情を十分理解し、地域の自立的で長期的な発展のための人材の育成事業、地域の特色を生かした事業の推進、地域への企業の誘致などいわゆるソフト面での支援が重要視されている。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.はじめに
 エネルギーは国民生活や経済活動の基盤をなすものであることから、国民一人一人が自らの問題として考え、そして行動することが、エネルギーを巡る様々な課題を解決する上で重要である。したがって、エネルギー政策は、他の分野にも増して国民各層との相互理解の下に進めていくことが求められている。このため、国民、国、地方自治体、事業者、エネルギー生産地・消費地など様々な主体間で、様々な視点や立場からエネルギーに関する多様なコミュニケーション、議論が行われることが必要になっている。国は、まずエネルギーに関する国民の知りたい情報は何かを把握するために、広聴(考えの把握)を行い、それを基にして、国民に対する説明責任を全うするとともに、国民がエネルギーに対する理解と関心を深めることができるようエネルギーに関する情報の積極的な公開や分かりやすく目に見えるエネルギー広聴・広報活動に努めることが重要となっている。
 原子力施設ではこれまでいくつかの事故が発生し、事故時の情報連絡の不十分さ、事故状況に関連する情報隠しなどによって、これまで国が進めてきた原子力政策に関する不信感、原子力開発の安全性・信頼性に対する不安感を国民に抱かせる結果となっている。原子力と国民・社会との共生を推進するため、国の顔が見える形での各レベルにおける真摯な取組の積み重ね、広く国民との相互理解を深めるための細かい広報・広聴、地域振興に向けた継続的な支援がなされている。また、原子力施設の立地と地元地域との共生に対して、国、事業者、地元自治体の各レベルにおいてそれぞれの担う役割は重要な意義をもっている。
2.原子力発電所と地域共生のモデル−柏崎刈羽原子力発電所サイトの例
 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所開発の起点は、1969(昭和44)年3月10日の柏崎市議会での「原子力発電所の誘致実現に関する決議」に遡ることができる。その決議文には「将来のエネルギー需要に備え、原子力発電所を誘致し、建設の実現を図ることは産業振興に寄与し、ひいては豊かな郷土建設を目指す地域開発の促進に貢献する」と書かれている。このように、エネルギー政策としての原子力の開発と地域の発展を関連づけて地元が率先して誘致することにより巨大プロジェクトが動きはじめたことが、柏崎刈羽の大きな特徴である。この決議主旨には、まさに今言う「原子力施設と立地地域との共生」の理念を読みとることができる。
 原子力開発と調和した地域の発展計画という構想がより具体的に展開したのは、1973(昭和48)年3月に開催の第6回原産年次大会で、当時の小林治助柏崎市長が「地域社会からみた原子力発電」という講演で地域社会の側からの要望を体系的に整理し、理論付けたものを九つの提言として発表してからである(表1)。この提言は国の原子力行政に多大な影響を与え、電源三法の成立、固定資産税特例措置の廃止、海洋生物環境研究所の設置等の実現に寄与した。2号機、5号機で初めて実施された公開ヒアリングも提言で求めた国による直接広報の実現とみることができる。九つの提言の最後は「原子力発電所立地周辺のモデル地区を建設してはどうか」であり、まさに原子力発電所と地域共生のモデル地区として柏崎地区の発展計画が進められたのであり、現在もこの発想が引き継がれている。
 電源三法交付金、固定資産税、核燃料税などにより地元自治体は資金的に裕福になり、様々な文化施設、公共施設の整備がなされている。また、立地周辺地域の電気料金の割引制度も導入された。発電所内では、4000名近い人が働いているが、そのうち約8割が新潟県出身者であり、雇用の創出という波及効果もある。
3.原子力施設立地地域の現状
 1966年に茨城県東海村でわが国最初の原子力発電所が運転を開始して以来、これまで40年以上経過し、この間に大規模な商業原子力施設が全国の多数の市町村に建設されてきた。これらの原子力施設の立地地域の状況をみると、人口(総数、生産年齢人口、就業人口総数、および生産年齢就業人口)は、原子力施設の立地が計画段階にある地域では大きく減少しているのに比べて、既に原子力施設が立地している地域では横ばい又は増加しているところが多い。また、財政面でみても、既設立地地域では固定資産税の増収などによってゆとりが生まれているほか、道路、上下水道など生活環境関連インフラ(社会基盤)の整備も着実に進められており、これまでの地域振興施策が一定の成果を上げていることがうかがえる(図1−1図1−2および図1−3参照)。しかし、個人所得、製造品出荷額、工業集積度などは、概して全国平均に比べ見劣りしており、高校卒業生の半分程度が地域外で就職している状況にある。また、生産年齢人口の伸びが頭打ちとなって高齢化が深刻化しており、若年層の雇用機会確保、産業振興など地域の活性化に向けた取り組みが必要となっている。
4.立地地域との共生への取り組み状況
 これまで、政府は、電気の消費者から電気料金の一部として集める電源開発促進税収を財源として、いわゆる「電源三法」によって公共用施設の整備など種々の立地地域振興施策を講じてきているが(表2参照)、その効果は、建設時期に限定されて必ずしも長続きせず、地域の長期的な発展基盤の整備にはつながっていないとの指摘がなされている。
 これらの指摘に対して、これまでに実施してきた生活基盤の向上を目的とする公共施設の整備に加えて、地域の産業発展を目的として産業基盤施設の整備、地域の発展を担う人材育成に対する支援、立地市町村のみならず周辺市町村を含めた広域的地域振興への取組の強化など、施策の拡充・重点化が図られつつある(図2参照)。
 2000年12月に成立した「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」に基づき、現在、14道府県を指定地域に指定し、立地地域振興計画の内容に対し支援策を実施している。また、原子力発電所が立地する都道府県、市町村に対し、各地方自治体が創意工夫を活かして申請するハード・ソフトの両面の事業に対して電源立地地域対策交付金による支援を進めており、効果的な電源地域の振興を図るため、幅広い事業を実施することを可能としている。交付金が活用された事業の透明性の向上、継続的な見直しのために、交付金を充当した個別事業の名称、交付金充当額、事業総額等、さらに、主な道県について、事後評価を資源エネルギー庁のホームページにおいて公表している。
 他方、電気事業者は、地域の雇用促進、立地地域の企業からの調達、立地地域の企業の技術力向上を支援しており、地域振興ビジョンに対して、固有のノウハウを活用し積極的に参加している。研究開発機関は、立地県の地域振興構想に参加するとともに、地域社会の活性化支援、地域人材の育成等の観点から、立地地域にある大学と連携した実用化プロジェクト等を推進している。また、地方自治体は、電源交付金等を活用して各種イベント等の地域振興事業を実施するとともに、(財)電源地域振興センターの情報誌等により地域振興事業や地域の声等の情報を発信している。また、原子力事業の関係者等の定住促進対策に取り組んでいる。
5.今後の取組の進め方
 原子力委員会の政策評価部会において、立地地域との共生に関する今後の進め方として、1)立地地域からの情報発信の重視、2)周辺地域との共生を図った中長期的な立地地域ビジョンの具体化、3)地域の尊重とビジョン実現に向けた積極参加、4)電源三法交付金活用に係るPDCA活動強化および国民との認識共有を目指した提言を行っている。提言の具体的な内容を表3に示した。
<図/表>
表1 地域社会からみた原子力発電
表2 電源立地促進対策交付金による整備計画対象施設一覧
表3 立地地域との共生に関する今後の進め方
図1−1 原子力発電所立地市町村における人口および財政力指数の推移(例)
図1−2 原子力発電所立地市町村における人口および財政力指数の推移(例)
図1−3 原子力発電所立地市町村における人口および財政力指数の推移(例)
図2 電源立地促進対策交付金等によって建設された施設(例)

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<関連タイトル>
電源地域に対する電源立地交付金とそのメリット (02-02-01-04)
原子力発電所建設のための手続き (02-02-02-01)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):原子力白書(平成8年版)、大蔵省印刷局(1997年3月)p.1−56
(2)原子力委員会(編):原子力白書(平成10年版)、大蔵省印刷局(1998年8月)p.1−69
(3)科学技術庁原子力局(編):原子力委員会月報通巻第475号(第41巻第3号)、大蔵省印刷局(1997年4月)
(4)(社)土木学会 原子力土木委員会:原子力発電所の立地多様化技術 付属編−2立地支援技術(1996年3月)p.1−19
(5)資源エネルギー庁(監修):資源エネルギーデータ集(1997年版)、電力新報社(1997年5月)p.32−45
(6)出澤正人:世界最大の原発基地(柏崎刈羽の特色と意義)、特集甦れ原子力、エネルギーフォーラム、No.527、1998年11月特大号、電力新報社(1998年11月)p.93−95
(7)小林治助:地域社会からみた原子力発電、第6回原産年次大会原稿集、日本原子力産業会議(1973年3月)p.53−54
(8)日本原子力産業会議(編):地域社会からみた原子力発電、第6回原産年次大会議事録(1973年3月)p.211−216
(9)柏崎市:原子力発電その経過と概要(1997年3月)p.1−36
(10)新潟県商工労働部原子力安全対策室:原子力発電所の現状(1997年3月)
(11)資源エネルギー庁公益事業部電源立地対策室(編):豊かな暮らしに向けて−電源立地の概要、電源地域振興センター(1998年10月)p.15
(12)敦賀市原子力安全対策課ほか(編):全原協−30年のあゆみ−、全国原子力発電所所在市町村協議会(1998年10月)p.50,p52,p53
(13)原子力委員会 政策評価部会:原子力政策大綱に示している原子力と国民・地域社会の共生に関する取組の基本的考え方の評価について(2007年11月20日)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/seisaku/bosyu/071120/01.pdf
(14)全国原子力発電所所在市町村協議会ホームページ:30年のあゆみ、人口および財力指数の推移、http://www.zengenkyo.org/ayumi/ayumi.html
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