<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> ガス・熱供給政策
<タイトル>
主要地域・国の天然ガス政策の展望 (01-09-04-07)

<概要>
 天然ガスは、消費量の急増が予想される一次エネルギー資源である。世界の天然ガス消費は2001〜2025年の間に、石油消費が平均年率1.9%で増加し、石炭が同1.6%で増加するのに比して、平均年率2.2%で増加すると予測されている。消費量は2001年の90兆CFから2025年の151兆CFへとほぼ70%増加すると見られている。資源の賦存状態に地域的な偏在があり、消費拡大とともに、社会基盤の整備、LNGターミナル、パイプラインの整備等が必要である。北米、西欧、アジア工業国、東欧旧ソ連、アジア開発途上国の天然ガス生産・消費と安定供給に向けた施策についての展望について述べる。
<更新年月>
2004年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.世界の天然ガス消費と生産
 天然ガスは、消費量の急増が予想される一次エネルギー資源である。世界の天然ガス消費は2001〜2025年の間に、石油消費が平均年率1.9%で増加し、石炭が同1.6%で増加するのに比して、平均年率2.2%で増加すると予測されている。消費量は2001年の90兆CFから2025年の151兆CF(注)へとほぼ70%増加すると見られている(図1)。天然ガス需要の最も大きい増加は開発途上国と予測されている。2001〜2025年間に平均年率2.9%で増加し、天然ガス使用は2025年には2001年の水準の約2倍になる(図2)。増加の大部分は発電用と予想される。先進工業国では2001〜2025年間の増加は平均年率1.8%で、そのうち最大の増加は、北米の13兆CFである(図3)。
(注)兆CF=0.028317×1012(m3
 天然ガス生産の予測を表1に示す。最大の増加は、中東で2001年の8.3兆CFから2025年には18.8兆CFに増加する。先進工業国は、最も増加が少なく2001年の39.3兆CFに対し、2025年には46.8兆CFになる(表1)。
 工業国における2025年の消費と生産のギャップは、消費の30%以上を他の地域の生産に依存することを意味している。開発途上国では生産が消費より16.3兆CF多い。旧ソ連では、生産が消費を11.7兆CF上回る。世界の他の地域は、この2地域からの輸出を消費することになる。2025年の世界の消費を賄うためには、新しい天然ガス資源の手当てが必要であり、国際的な天然ガスパイプラインの計画が進められている。大部分の国際取引はLNGで行われている。このためコスト引き下げの努力とあいまって、LNGが競争力を増し、LNG貿易は増加すると期待されている。天然ガスを需要センターまで輸送する経済は、天然ガス市場価格に依存し、石油の場合の様に単純でない。世界の石油消費の60%は、輸入によって供給されるが、天然ガス市場はもっと孤立する傾向にある。価格は、国から国と変動する。アジアとヨーロッパでは、天然ガス価格は、石油価格に影響される。天然ガスの使用と貿易が拡大すると、価格調整機能が変化し、全世界的な天然ガス貿易と市場が形成されるであろう。
2.世界の埋蔵量と資源量
 1970年代半ば以来、天然ガス埋蔵量は増加傾向にある(図4)。2004年には世界の埋蔵量は9年続けて増加している。Oil & Gas Journalによると、2004年1月1日現在、確認埋蔵量は、2003年のそれより575兆CF(10%)増加して、6076兆CFと評価されている。増加の大部分は、開発途上国で認められている。カタールでは、確認埋蔵量が2003年の508兆CFから2004年の910兆CFに増加し、世界の増加の大部分を占めている。イランでは128兆CF、ナイジェリアでは35兆CFの少量だが着実な推定埋蔵量の増加が報告されている。世界の天然ガス埋蔵量のほぼ4分の3は中東、東欧及び旧ソ連にあり(図5)、また、ロシア、イラン、カタールの上位三国を合わせると世界の58%を占める(表2)。残りの埋蔵資源は、他の地域にほぼ均等に分布している。
 天然ガス消費の増加率が高いにもかかわらず、大部分の地域の可採年数は大きいままである。世界全体では可採年数は60.7年である。可採年数は、中南米では68.8年、旧ソ連では75.5年、アフリカでは88.9年、中東では100年を超える。最近の米国地質調査(US Geological Survey)によると、未発見天然ガス資源は4258兆CFと推定されている。これは2004年までの世界の累積消費量の約2倍に相当する。約3000兆CFはパイプラインや人口密集地から離れた浜辺にある。新しいガス資源のうち、2347兆CFが、確認埋蔵量に追加されると期待されている。
3.主要地域の政策
(1)北米
 天然ガス消費は2001〜2025年間に平均年率1.6%で増加すると予想される。メキシコの消費の増加は最高で、この期間に年率3.9%で増加し、2001年に1.4兆CFから2025年の3.5兆CFになる。カナダは年率2.2%で増加し、この期間に70%増加する。米国は、北米最大の消費国で、2025年に31.4兆CFを消費する。しかし、この期間の初期の消費は伸びるが、2020年以後は、価格の高騰によって石炭を発電に使う傾向が強くなり、伸びは鈍化する。全体として平均年率1.4%で増加する。北米の天然ガス市場は、緊密に統合されている。カナダは米国の輸入の大部分を供給し、米国はメキシコに輸出している。
 米国はカナダのパイプラインによる輸入を減らし、メキシコの米国依存のLNG輸入は減少するであろう。現在北米は消費すると同量の生産をしているが、2010年には消費が生産を2兆CF、2020年には5兆CF、2025年には6兆CF、超える。他の地域からの輸入でギャップを補う必要があるが、米国は天然ガス資源の3.1%を持っているに過ぎないが、2001年にはどの国よりも多く消費している。また、天然ガスの生産はロシアに次ぐものであるが、生産の伸びは消費より鈍いから、LNGの形での輸入に期待することになる。2001年に米国では、2つのLNG受入ターミナルが活動している。2001年に価格が高騰したとき、2つのターミナルの再開が計画され、現在4ターミナルが活動している。また、2007〜2010年間に、4つの新規ターミナルがメキシコ湾沿岸及び大西洋沿岸に計画されている。2002年8月、16ターミナルが計画されている(図6)。世界的には、LNGが輸入エネルギー源として、重要度を増しており、ヨーロッパとアジアの幾つかの国、特に日本は、これに強く依存している。米国は30年来、日本にLNGを輸出してきた。世界のLNG市場の拡大は米国に影響すると思われる。例えば、2001〜2002年冬季の日本の12原子力発電所の一時閉鎖、韓国の2002〜2003年冬の寒気によって、これらの国のLNG需要が増加したことが米国の短期のLNG供給に影響した。
 カナダは消費以上に天然ガスを生産している。しかし、国内消費が増加するので、輸出用の天然ガス生産は減少する。また、これまで、2025年まではカナダは米国天然ガスの主要供給源と考えられていたが、現在では、2015年に米国のLNG輸入がカナダからの輸入を超えると予想されている(図7)。第一の理由は、1999年の評価に比べて、2003年評価では、約3兆CF生産量が減少すると予想されていることによる。しかし、パイプラインの建設などによってこの傾向を緩和しようとする動きもある。
 メキシコの需要増は天然ガス燃焼のコンバインド・サイクル発電によるものである。しかし、民生・業務部門の社会基盤も整備されつつあり、総ての部門で需要は増加しつつある。従来、米国からの輸入に依存していたが、外国資本を誘致し、LNG輸入施設を整備し、これに対処しようとしている。メキシコ湾岸及び太平洋岸に、米国とメキシコ市場のための5つのターミナル施設を計画している。
(2)西欧
 消費量の増大が最も速い燃料資源と考えられている。消費は2001年の14.8兆CFから2025年の23.7兆CFに平均年率2.0%で増加すると予想される。現在世界の4%の埋蔵量しか保有していないし、生産量も2001年の10.2兆CFから、2025年の9.8兆CFに減少する(表1)。2001年には、消費の31%を他の地域から輸入し、2025年には59%を輸入する。2002年に消費量の多い国は、多い順に、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、フランスであるが、2015年に英国とドイツの順序が入れ替わり、最大の消費国になる(図8)。これは部分的には、20年後の原子力の削減政策と関係している。英国は26.0兆CFの埋蔵量を持ち、西欧最大の生産国であり、最大の消費国である。1990年代半ばまで、英国は輸入国であったが、規制緩和と私有化が進み、生産が増加し始めて、1997以後は輸出国に転じた。1995年のガス法の通過がそのきっかけである。ガス企業の私有化は安価なガス供給を増加し、発電の石炭依存を減らすことになった。発電における天然ガスのシェアは1988年の1%から、2010年には50%になる。
 オランダとフランスの消費は緩やかに増加している。フランスのガス消費は上位5ヶ国の内で一番低いが、これは、ガス企業が国営で、ガス市場私有化が遅いためである。その他の国をまとめると、3.3%で増加すると予測されている。増加の著しい国は、スペイン(年増加率14.4%)、ポルトガル(同21.0%)である。
 2002年、西欧の主要な生産国は、大きい順に、英国、ノルウェー、オランダである。まとめると、8.0兆CF生産し、4.9兆CF消費している。残った少量を他の国に輸出している。英国とオランダのガス田は古く、可採埋蔵量と生産は減少しつつある。新ガス田が見つかる可能性は低い。ノルウェーは2002年末に沖合にガス田を確認しており、2001年末より確認埋蔵量は75%増加している。西欧の天然ガス輸入は他の地域、主に、リビア、アルジェリアからのLNG輸入とロシアからのパイプラインに依存している。ドイツ、イタリア、フランスは西欧最大の天然ガス輸入国である。ドイツは38%をロシアのパイプラインから残りを地域内から、イタリアは30%をロシアのパイプラインから32%をアルジェリアのパイプラインから、9%をLNGとしてアルジェリアとナイジェリアから輸入している。西欧は10の操業中のLNG輸入施設を持っている。スペインでは3施設は拡充を計画し、新しい施設を建設中である。英国でも建設計画が進行している(図9)。
(3)アジア工業国
 日本とオーストラリア/ニュージーランドでは、年間の天然ガス消費が1991年から2001年の間に50%増加し、2.6兆CFから3.9兆CFに増加した。2001〜2025年間には、平均年率1.8%で増加し、2025年に6.0兆CFの消費量になる。
 日本の天然ガス消費は、2001〜2025年間に平均年率1.6%−日本の経済成長率と殆ど等しい−で増加し、2001年の2.8兆CFから2025年の4.2兆CFになる。世界最大のLNG輸入国として、日本はアジア−太平洋天然ガス貿易で主要な役割を演じている、日本の需要の約97%はLNG輸入で調達される。日本はマレーシア、オーストラリア、ロシアの樺太、インドネシアとLNG供給契約を締結している。
 オーストラリア/ニュージーランドの天然ガス消費は、2001年の1.1兆CFから平均年率2.2%で増加し、2025年には1.8兆CFになる。ニュージーランド最大のマウイガス田は推定埋蔵量1.3兆CFであるが、生産容量がなくなって、2007年には涸れると見られている。この地域でインドネシア、マレーシアに次ぐ輸出者であるオーストラリアでは、地方の生産者がアジア市場で競争力を持つよう鉄道(蒸気)プロジェクトが進められている。オーストラリアのNorth West Shelfベンダーは液化プラント(Withnell湾LNG設備)を持ち、三台の列車と年産7.5百万トンの生産量を持っている。2004年には4台目の列車を持ち、5台目を考慮中という。
(4)東欧/旧ソ連
 東欧/旧ソ連は世界の35%の以上の確認埋蔵量を持ち、世界の天然ガスの28%を生産する。2002年には地域の市場の78%を生産し、世界市場に22%−米国より多い−をもたらした。2002年、天然ガス生産はロシア、グルジア、ウズベキスタン、ポーランド、カザフスタンで増加し、その他の国では減少している。主な輸出国は、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンである。ベラルーシ、チェコ共和国、スロバキア、ハンガリーは地域の最大の輸入国である。
(5)アジア開発途上国
 図10にアジア開発途上国の天然ガス消費の予測を示す。全体として3.5%で増加する。主要な理由は発電用燃料の多様化と環境問題にある。地域最大の生産国は、インドネシアとマレーシアで、市場で大きな役割を果してきたが、急速に台頭してきた消費国、中国とインドの影響が大きくなっている。この両者の消費は、それぞれ平均年率6.9%、4.8%で、増加する。
 中国の天然ガス埋蔵量は2002年に53.3兆CFと推定された。2001年には、天然ガスを1.0兆CF−エネルギー消費の中の3%−を消費している。オリンピックの2008年までに120億ドルの一部をかけて天然ガスのインフラを整備する計画を持っている。既に、オルドス盆地の靖辺ガス田から西安方面、北京方面(天津まで)、そして銀川方面に輸送するライン、南部では、天然ガスの大産地である四川盆地から成都、重慶へのパイプラインがあり、また、南シナ海の崖城ガス田から海南島、そして香港への海底ラインがある。1999年には、東シナ海の平湖ガス田から上海へのパイプラインも完成している。計画中の幹線パイプラインで最も注目されるものは東西横断のラインで、タリム盆地〜上海間の4200kmに及ぶ長距離天然ガスパイプラインである。これは中国西部のガスを東部に輸送する「西気東輸プロジェクト」と呼ばれ、2001年に着工し、1期工事は2004年完成、2期工事は2007年完成を目指すものである。このパイプラインは、タリム盆地とオルドス盆地の二大ガス埋蔵地区を繋ぐものであり、ガス供給の安定性、柔軟性が確保されるものと考えられている。この他、西シベリア−中国ライン、サハリン−中国ラインも検討されている。
<図/表>
表1 世界の地域毎の天然ガス生産予測(2001−2025)
表2 世界の天然ガス確認埋蔵量
図1 世界の天然ガス消費の予測
図2 世界の地域毎の天然ガス消費予測(1970−2025)
図3 地域毎の天然ガス消費の増加予測(2001−2025)
図4 世界の地域毎の天然ガス資源埋蔵量の推移
図5 2004年1月1日の地域毎の天然ガス埋蔵量
図6 北米の現存及び計画中のLNGターミナル
図7 米国の天然ガス輸入の予測(1990−2025)
図8 西欧諸国の天然ガス消費の予測(1990−2025)
図9 操業中及び建設中のLNGターミナル
図10 アジア開発途上国の天然ガス消費予測(1970−2025)

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<関連タイトル>
LNG(液化天然ガス)導入の促進政策 (01-09-04-04)

<参考文献>
(1)Energy Information Administration:International Energy Outlook 2004、Natural Gas
(2)総合研究開発機構:北東アジアエネルギー・環境共同体への挑戦(2001年4月)
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