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1.LPG需要の動向と今後の見通し
わが国のLPG(液化石油ガス:Liguefied Petroleum Gas)需要は、家庭用、自動車用など、他のエネルギーヘの即時の代替が困難な民生用需要の割合が高いことが特徴である。今後のLPG需要の見通しについては、民生用需要については、今後の都市ガスの天然ガス化にともなう消費量の減少が見込まれるものの、現在、総世帯の55%に相当する約2500万世帯におよぶLPG消費世帯数増加、ガスヒートポンプなどの空調分野における新規需要、業務用途における堅実な消費量の増加が見込まれる。
運輸部門については、従来タクシー用が中心であったが、NO
x対策から軽油トラックの代替としてのLPGトラックが開発されたことから、今後はディーゼル代替LPGトラックの普及が見込まれ、需要の増加が見込まれる。一方、産業分野については、景気の低迷等により減少することが見こまれる。1998年6月の総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会中間報告によると、現行の省エネルギー施策を前提とした場合(基準ケース)、2010年度まで年率平均0.8%で増加することが見込まれ、2010年度におけるLPG需要は2270万tと見込まれる。しかし、今後新たな省エネルギー対策などを推進することにより(対策ケース)、2010年度までは年率平均0.3%で推移するものと予想され、2010年度の需要量は2130万tと見込まれている。LPGは
LNGとともにクリーンエネルギーとして位置付けられている。こうした観点から、LPGの新たな利用方法の開発及びLPG利用の効率化を積極的に促進することが必要とされている。
(2001年3月27日の石油市場動向調査委員会の資料によると、2002年度の総需要は,前年度と同じで1845万tとなる見通し。2006年度の総需要は、2001〜2006年度の平均伸び率O.6%で1898万tとなる見通しである)
1.1 世界におけるLPG需給勤向
(1)世界のLPG需要量の推移
LPGの世界の需要は1975年から1996年までの21年間で約2.5倍の増加をみせており、最近では特にアジア地域での需要が急増している。
(2)今後の需要の見通し
中国は、華南経済圏を中心とした需要増により、近い将来LPGの純輸入国となり、インドが続いて大きな輸入国となることが見込まれる。このようにアジアでの燃料としての需要の飛躍的な伸びと、世界的な化学原料用としての需要の増加が想定されるため、全体として相当な伸びとなると見込まれる(
図1)。
(3)今後の供給の見通し
アブダビなどの輸出能力増強により中東地域の輸出可能量は拡大するとみられるが、一方、インドネシアなどのアジアの輸出国については、内需の拡大にともない輸出能力は減少する見通しにあり、LPG貿易の中東依存度は世界的に高まると予想される(
図2)。
1.2 わが国への供給の推移
わが国は世界のLPG需要の約8%を担い、アメリカに次ぐ世界第2位のLPG消費国であるとともに、世界のLPG貿易量の約2割強を占める最大の輸入国である。LPGは、わが国の1次エネルギー供給の約5%を占め、家庭用、自動車用などの民生分野や広範な産業分野において利用されているが、供給量の約8割を中東地域に依存している状況にある(
図3)。なお、輸入LPGのうち、石油生産にともなって産出されるガス(いわゆる「随伴ガス」)の生産量は近年ほぼ横ばいにて推移している一方、天然ガス生産にともなって生産されるガス(いわゆる「非随伴ガス」)の量が増大傾向にある(
図4)。
1.3 価格の推移と供給安定性
(1)LPG輸入価格の推移
世界のLPG貿易に占めるサウジアラビアのシェアが圧倒的に多いため、長期契約により輸入する場合のLPG価格(FOB)は、他の輸出国もサウジアラムコの価格をべースに設定している。サウジアラビアはFOB価格について従来の原油価格連動型のフォーミュラを廃止し、1994年10月、サウジアラムコがLPG市場動向を見極めて決定した価格をLPG購入契約者に通知するCP(コントラクトプライス)方式に変更した。それ以来、FOB価格の不安定性が指摘されている。
2.LPGの備蓄
1999年度における、LPGの国内生産と輸入の比率はおおむね20:80となっている。しかも、LPGの輸入先は約80%が中東地域となっているように輸入先が偏在しており、今後の世界におけるLPG増産計画や消費国からの輸送距離などを考えると、わが国における中東依存の輸入構造は早急には変わらないものと考えられる。1977年のサウジアラビアのアブカイクにおけるLPGプラントの事故により、わが国のサウジアラビアからの輸入量が約2カ月にわたり激減し、そのため、わが国のLPG需給が極めて逼迫した経験を踏まえるとLPGの輸入がある期間途絶または減少した場合、国民生活および国民経済に与える影響が極めて大きいと考えられる。したがって、輸入LPGの安定供給を図っていくためには、わが国へのLPGの供給が不足する事態が生ずる場合に備えて備蓄を行うことが、緊急かつ重要な課題となった。そのため、1981年に石油備蓄法の一部を改正し、石油と並んでLPGについても備蓄を行うこととしたものである。
2.1 民間備蓄
石油ガスの民間備蓄については、1981年の石油備蓄法の一部改正により備蓄対象として新たに加えられ、現在、輸入量の50日分(1988年度末達成)の備蓄義務を課している。なお、1995年に石油備蓄法の一部改正を行い、LPG輸入業者が常時保有すべき基準備蓄量を、可能な限り事業活動の実態に即したものとするため、毎月、その月の直前の12カ月の輸入量を基礎に算定する方法に改めた。今後、当分の間、この50日備蓄の円滑な維持を図っていくこととしている(
表1)。
2.2 国家備蓄
1990年8月のイラクのクウェートヘの侵攻に端を発した中東湾岸危機は、LPG輸入の相当量の減少が生じた場合における対応の難しさと、平時におけるLPG安定供給基盤強化への取り組みの重要性とを改めて認識させるものとなった。年間輸入量の50日分に相当する民間法定備蓄の存在は、第1次および第2次石油危機時との大きな相違点であり、民間法定備蓄は、安定供給のための量的拠り所としてだけではなく、心理的な意味での安定要因としても機能した。しかし、事態が長期化する場合においてもLPG供給の安定を図るためには、相当程度の需要抑制、国内製油所におけるLPG増産などの措置を含む困難な対策を実施する必要があった。LPG供給関連産業の努力、一般消費者の冷静な対応、電力・鉄鋼などの大口需要家の積極的協力などにより、結果的に社会的混乱は回避できた。しかし、中東湾岸危機への対応の経験にかんがみ、消費者・中小需要家、都市ガス業界、タクシー業界、LPG供給関連産業などの要請を踏まえ、LPG安定供給基盤強化のあり方について検討を行うことが急務となり、1992年6月石油審議会(現総合資源エネルギー調査会石油分科会)石油部会液化石油ガス分科会において、石油ガスの安定供給基盤強化のあり方について検討が行われ、2010年度に150万tを目標とする国家備蓄制度創設の必要性が提言された。この提言を受け、1993年度以来、石油ガス国家備蓄制度の実施に向けて、石油公団によるLPG国家備蓄基地の立地候補地としての各種調査(概要調査、詳細調査、基本計画調査)を実施してきており、1998年10月に七尾地点、2001年5月に神栖地点について立地計画を行った。現在、用地造成、基地の実施計画を行っている。備蓄量は2000年度末で61日分、228万トンとなっている。
3.流通機構
LPGは、幅広い分野で使用され、国民生活に必要不可欠な石油系ガスである。その流通機構は、石油製品(燃料油)の場合と同様、直売方式、特約店販売方式によっている。現在のLPGの流通経路は、次の4パターンがある。
(1)元売業者(生産・輸入業者)→大手卸売業者→地場卸売業者→小売業者→消費者
(2)元売業者(生産・輸入業者)→卸売業者→小売業者→消費者
(3)元売業者(生産・輸入業者)→同支店・出張所→小売業者→消費者
(4)元売業者(生産・輸入業者)→小売業者(卸売業者または共同組合)→消費者
通常最も多いのは、(1)の場合であるが、なかには卸売段階でさらに第2次、第3次卸売業および一店卸小売業者が介在する場合もある。流通機構を改善し、エネルギー間競争がますます激化する中で、消費者に選択され、競争原理の下に流通合理化・効率化を推進し、消費者利益の増大に結実させることが大きな課題となっている。1997年6月のLPGビジョン検討会最終報告(1994年9月に中間とりまとめ)においても、「21世紀には都市ガス以上の消費者満足度を達成する」との目標を中心に置き、(1)供給効率化による流通コストの削減、(2)きめ細かなサービスや新規事業の展開を図る、(3)業界ないの協調を進め、需要開拓・情報システム統一を図るとしている。また、明瞭な料金体系、消費者へのPR活動の強化などを推進し、LPGが消費者に選ばれるエネルギーとなることが必要であるとされている。
<図/表>
<関連タイトル>
日本の短期、中期の石油供給計画(1999〜2003年度) (01-09-03-03)
LPG(液化石油ガス)供給体制の整備 (01-09-04-05)
都市ガス需給の現状と推移 (01-04-03-01)
<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(平成11年1月)、p301-311
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー’98、電力新報社(1998年10月)、p.77-79,p.189
(3)通商産業省資源エネルギー庁石油部(監修):平成10年「石油資料」附石油供給計画、石油通信社(1998年8月)、p.225-235
(4)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)