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<概要>
 都市ガス業界のLNG導入は、1969年に東京ガスがアラスカから受け入れたのが最初である。その後、大阪ガス、東邦ガスが導入したことにより、LNG化は急ピッチに進み、今日では都市ガス事業者220社のうちLNGを原料として使うガス事業者は152社となり、都市ガス事業全体における天然ガス原料の割合は93%に達している。LNGは、クリーンで安全性に優れ、発熱量の高さによるガス導管の有効利用など多くのメリットをもつが、地方都市がLNGを導入するには、多額の資金と大勢の技術者を必要とするなどの問題もある。
<更新年月>
2005年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.天然ガスの特徴
 天然ガスは、石炭や石油のような固体、液体の燃料に比べ、以下のような優れた特性を持っている。
A.流動性に富み、パイプライン網の整備によって、簡単に安定した広域供給ができる。
B.発火点が低く、点火が容易である。
C.組成が単純で、炎が安定している。
D.燃焼による煤煙が殆どなく、灰のような残留物もまったくない。
E.硫黄分の有害物質を事前に簡単に処理できるため、公害の極めて少ないエネルギー源である。
 そのため、天然ガスは現在、都市ガス、火力発電、一般工業用の燃料として用いられており、さらに将来は、自動車用燃料、燃料電池など多くの利用が期待されている。
 天然ガスが液化されて輸送されるようになるまでは、パイプラインによる輸送以外に適当な輸送手段がなく、消費地と生産地がごく限られた範囲でしか利用されなかった。天然ガスの液化は、1941年、米国・クリーブランド市の都市ガスのピークシェービング用として貯蔵されたことが実用に供された初めであり、LNG(液化天然ガス:Liquefied Natural Gas)の海上輸送は、1959年2月、米国・ルイジアナ州のチャールズ湖岸から2,000tのLNGをイギリス・キャンベイ島まで運んだメタンパイオニア号が最初である。そしてメタンパイオニア号の成功から5年後の1964年、アルジェリアからイギリスへ世界最初のLNGプロジェクトが開始された。一部のLNGプロジェクトはパイプラインとの競争に敗れて、中断に至っているものもあるが、現在、世界13か国に16か所のLNG液化基地(日本はインドネシア、マレーシャなど10か国から輸入、アジア・太平洋地域が75%、中東は22%)が稼働しており、2004年におけるLNG貿易の43.2%(約770億m3)を日本が占めている。LNGの輸入国は現在、日本、韓国、米国、スペイン、台湾、フランス、イタリア、トルコなど14か国であるが、今後はインド、中国などにおいてもLNGの導入が計画されている。
2.日本のLNG需要
 2005年3月に答申された総合資源エネルギー調査会需給部会の「2030年のエネルギー需給展望」)においては、「環境に優れた天然ガスについては、発電用および熱用の双方について利用を拡大していくことが望まれる。また、燃料電池に用いられる水素の有力な供給源としても期待されている。わが国は欧米先進諸国に比べて民生や産業部門における天然ガスの利用が進んでおらず、更なる利用拡大が期待される。」とされている。
 2030年度における一次エネルギー供給における天然ガス供給の割合は、2000年度の13.5%から17.8%と大きく伸び、その供給量は2000年度比37%増(年平均1.2%増)の見通しである。2010年度の天然ガス供給は、8,100万kL(原油換算)(LNG換算で5,700万トン)が目標数量である。わが国のLNG輸入状況を図1に示す。なお、2005年3月現在、一般ガス事業者は220事業者、そのうち、天然ガス導入事業者は152事業者、原料に占める天然ガスの割合は全国合計で93%(LNG87.1%、国産天然ガス5.9%)に達しているところである。現在、中堅の地方都市ガス事業者は、天然ガス化のためのLNG基地など供給基盤を整備中であり、さらに、他の地方中小都市ガス事業者についてもIGF計画(ガス種統一計画)に沿って、可能な限り2010年を目標に天然ガスを中心にした高カロリー化を推進していくこととしている。
3.供給体制の整備
 日本の天然ガス/LNGの利用が欧米と大きく異なる点は、
(1)地形、土地の制約からパイプライン網が未整備なこと、
(2)島国で、ガスの殆どを海外に頼らざるを得ないことである。
 LNGの導入には、LNG使用の火力発電所やパイプラインを含む都市ガス供給施設とLNG船が安全に航行、着桟できる港湾・バースおよび貯蔵施設を設置する受入基地の確保が不可欠であるが、近年、特に大消費地近辺における受入基地などの建設が困難となってきている。また、LNGを受入基地において再気化した後、需要家に供給するためには、原油、重油、ナフサ、LPGなど在来の燃料と異なり、パイプラインによらなければならない。さらにLNGプロジェクトの性格上、LNGの受け入れが年間を通じて、一定に行われるため需要量の景気変動、季節変動への対応や、供給中断時対策などが必要であり、従来から、電力と都市ガスとの共同購入(季節変動がほぼ逆。最近は、似たような季節変動曲線になってきている)や、都市ガスの大口購入者向けの緊急時の供給中断条件付契約などの工夫を行っている。これらの状況に対処するため、以下のような助成措置を講じてきている。
(助成措置)
(1)LNG受入設備に対する日本開発銀行からの融資(開銀法18条)および北海道東北開発公庫からの出融資(北東公庫法)ならびに中小企業金融公庫の融資(中小公庫法19条)
(2)産業用LNG導入のための日本開発銀行・中小企業金融公庫の長期低利融資(開銀法18条、中小公庫法19条、代替エネ法7条)
(3)産業用LNG契約制度(ガス事業法20条ただし書)
(4)地方都市ガス事業者に対する天然ガス化導入促進援助(予算措置)
4.地方都市ガス事業における天然ガス導入
4.1 導入の意義
 地方都市ガス事業の天然ガス導入に際しては、石油代替エネルギーの導入という国民経済的にみて重要な意義があるとともに、ガス事業という観点から、次のような意義がある。
(1)原料の供給安定性
 天然ガスは石油に匹敵する埋蔵量を有し、かつ賦存地域の偏在性が小さく、また、東南アジアや先進国からの長期契約に基づく輸入に依存できることから、供給の安定性が高い。
(2)安全性の向上
 天然ガスは、
 (a)空気よりも軽いため、万一のガス漏れの場合にも大気中に拡散しやすく、爆発事故が発生しにくい、
 (b)COを含まないため、ガス中毒がないなどの特性があり、安全性で優れている。
(3)料金の長期安定
 天然ガスは、発熱量が通常のガスの2倍以上であることおよび高圧力で送出できることなどにより、導管の利用効率が2倍以上に向上するため、ガス事業者の設備投資の2/3を占める導管投資を節約できる。さらに、ガス製造面でもコスト節減効果があり、これらの点から料金の長期安定に資する。
4.2 天然ガス化の推進
 実際の導入に際しては、
 (a)膨大な初期コスト負担の発生、
 (b)LNG導入に必要な技術力の不足などの問題点がある。このため、地方都市ガス事業の天然ガス導入に係る問題点を解消し、その導入を促進するため、1985年度より、資金面、技術面の支援を講ずることとした。
 また、地方都市ガス事業の天然ガス導入の促進に係る事業を専門的に実施する機関として(財)天然ガス導入促進センターが設立(1985年8月通商産業大臣許可)され、天然ガス導入に関する指導、研修、利子補給、調査研究などの各種事業を行っている。2004年度末の熱量変更件数は累計で約510万件、そのうち共同化事業約239万件が実施された。2005年度は、熱量変更約41万件、そのうち共同化事業約25万件が実施される予定である。
 2003年6月に、エネルギー産業における天然ガスへの期待の増大を踏まえ、ガス事業の競争環境の整備、ガス価格の一層の低下などの観点から、法改正を行い効率的なガス供給基盤の整備とその有効利用の促進が図られた(図2)。
<図/表>
図1 LNGの供給国別輸入量の推移
図1  LNGの供給国別輸入量の推移
図2 2003年のガス事業制度の改革
図2  2003年のガス事業制度の改革

<関連タイトル>
LNG(液化天然ガス)導入の促進政策 (01-09-04-04)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.373-380、p.587-603
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー2000、(株)電力新報社(1999年10月)、p.122
(3)(財)天然ガス導入促進センターホームページ:概要、天然ガスについて
(4)資源エネルギー庁ホームページ:平成16年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)
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