<概要>
電解式水素製造は重要な工業的水素製造法であったが、わが国から本製造法が全く姿を消した理由は、電解法に較べて炭素質燃料資源から直接水素を製造する方が安価であるからである。しかし、最近、米国において、第四世代原子力システムの一つである
超高温ガス炉(VHTR)等の先進的原子炉を用いた水素・電力併産システムにおいて、水の熱化学分解法とともに
高温水蒸気電解法が再び注目を集めるようになっている。現在、開発が進められている電解式水素製造法には、高温・高圧水電解法、固体高分子
電解質水電解法(SPE法)および高温水蒸気電解法(SOE法)がある。
<更新年月>
2004年08月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
1.電解水素製造技術
電解式水素製造は重要な工業的水素製造法であったが、工業的水素製造法としては、わが国から全く姿を消した。その理由は、電解法に較べて炭素質燃料資源から直接水素を製造する方が安価であることによる。しかし、最近、米国において、第四世代原子力システムの一つである超高温ガス炉(VHTR)等の先進的原子炉を用いた水素・電力併産システムにおいて、水の熱化学分解法とともに高温水蒸気電解法が再び注目を集めるようになっている。
実用化された、または実用化の時期が近いと考えられる各種の電解水素製造技術の比較を
表1に示す。従来型アルカリ水電解と高温・高圧型アルカリ水電解は商用技術であり、固体高分子水電解は一部実用化されている。
以下に開発が進められている電解式水素製造法について述べる。なお、高温水蒸気電解法は基礎研究の段階であり、米国アイダホ国立環境工学研究所等で研究が開始されている。
2.高温・高圧水電解法
高温・高圧水電解法は、従来のアスベスト隔膜に代わり耐熱・耐食性を改善したチタン酸カリウム含浸テフロン隔膜を用いることで、高温・高圧でのアルカリ水の電解を可能にし、高い効率で高圧水素を得るものである。この技術については、昭和56〜58年度に水素発生量20Nm
3/時のプラントを建設し、120℃、20気圧で運転研究を行い、従来の電解槽の2倍の
電流密度(40A/(dm)
2)と電力から水素への変換効率83〜86%(従来60〜75%)を達成し、研究開発を終了した。海外では、電力費の安いカナダ、ブラジルなどで数万Nm
3(H
2)/時規模の大規模プラントが稼働中である。
3.固体高分子電解質水電解法
固体高分子電解質水電解法(SPE法)は、イオン交換膜を隔膜および電解質として用い、その両側に電極を接合し、純水を電解するものである(
図1参照)。したがって、メンテナンスが容易で、高純度の水素を高い効率で得ることができる。その基礎技術は、ほぼ確立し、ガスクロ用高純度水素発生装置として市販され広く利用されている。最新の報告では、電極面積50cm
2の固体高分子型電解セルの耐久試験が実施中であり、4年間にわたる電解試験により、120℃において電流密度100A/(dm)
2および200A/(dm)
2の場合に電力から水素へのエネルギー効率として90%および81%が達成されている。本電解法の研究開発は、
ニューサンシャイン計画の下で水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)プロジェクトとして進められた。現在、電極面積2,500平方cm、電流密度1A/平方cm以上、エネルギー効率90%以上を目指して開発が進められている。
4.高温水蒸気電解法
高温水蒸気電解法(SOE)は、現在活発に研究開発が進められている固体電解質型燃料電池を逆作動させるものである。酸化物固体電解質を用い、高温(700〜900℃)で水蒸気を電解する。水電解に必要な電気エネルギーの一部を熱エネルギーで補い、電力のコストを下げることを目的としている。当初、円筒型電解要素が取り上げられたが、今後、実用化がより容易と考えられる平板型電解要素(
図2参照)を対象とする研究が進むものと予測される。最近、米国アイダホ国立環境工学研究所等で研究が開始されている。
<図/表>
<関連タイトル>
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術 (01-05-02-05)
熱化学水素製造 (01-05-02-03)
<参考文献>
(1)(社)日本能率協会(編):水素エネルギー技術会議、(社)日本能率協会(1985)
(2)水素エネルギーシステム研究会(編):水素エネルギー読本、水素エネルギーシステム研究会(1982)
(3)電気化学協会(編):先端電気化学、丸善(1994)
(4)(財)エンジニアリング振興協会(編):水素利用クリーンエネルギー国際シンポジウム「IHCE'95」、(財)エンジニアリング振興協会(1995)
(5)資源エネルギー庁(監修):1999/2000 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)p725-740
(6)日本原子力研究所:高温工学試験研究の現状・1994年(1994年10月20日)p80-81