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<概要>
 2003年は、年明け早々名古屋高裁金沢支部の「もんじゅ」設置許可無効判決とそれに対する国側の上告から始まった。東京電力の東通1、2号機の第1次公開ヒアリング開催や、北海道電力の泊3号機の着工など立地進展が相次いだ。その一方で2年後に電力自由化が迫り関西、中部、北陸電力3社が共同で行っていた珠州原子力発電所建設計画は経済的理由により凍結したことを発表した。
 北朝鮮はNTP脱退を宣言し、核兵器保有も非公式に認め朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は北朝鮮での軽水炉建設事業を2003年12月1日から1年間停止すると発表した。
<更新年月>
2005年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
2003年
(平成15年)
1/6 核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)は、3/29に新型転換炉ふげん(ATR:16万5,000kW)の運転を終了すると発表 国際原子力機関(IAEA)は、緊急理事会において北朝鮮に保障措置機能の回復と査察官の復帰等を求める決議を採択するも、国連安全保障理事会への報告は見送る
1/10   北朝鮮政府、核不拡散条約(NPT)の即時脱退を宣言▼イギリス政府は、ブリティッシュ・エナジー(BE)社の再建計画支援のため、現行電気事業法の改正案を発表▼中国がITER加盟を申請する書簡をITER参加
1/16   ベルギー議会上院、脱原子力法案を可決
1/27 名古屋高裁金沢支部の川崎和夫裁判長はサイクル機構の高速増殖炉「もんじゅ」の安全審査には欠落があるとして設置許可は無効であると判決
1/30   アメリカDOEエイブラハム長官、ITERに復帰すると発表
1/31 高速増殖炉「もんじゅ」の設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支部の判決を受け、国側は上告することを決定  
2/4   韓国の産業資源部(MOCIE)と韓国水力・原子力会社(KHNP)は放射性廃棄物処分場のサイト候補地として盈徳・蔚珍・霊光・高敞の4ヵ所を公表
2/10 電源開発は大間原子力発電所(ABWR:138万3,000kW)の炉心位置を変更する新たな配置計画を発表▼原子力安全・保安部会「検査の在り方に関する検討会」が原子力発電所の新検査制度具体化に向けて検討再開  
2/12   IAEA理事会、北朝鮮が核不拡散条約(NPT)と保障措置協定の更なる違反をしているとして国連安保理に付託することを決定▼アメリカ濃縮会社(USEC)が遠心分離法を採用したウラン濃縮試験施設をオハイオ州ポーツマスに建設するための設置許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請
2/14 経済産業省(経産省)は、日本原燃の使用済み燃料受入れ・貯蔵施設のPWRの燃料貯蔵プールに漏えいがあった問題で、同施設の変更に係わる設計及び工事方法を認可。これを受け日本原燃は翌15日、工事に着手 BE社、保有するブルース・パワー(BP)社のすべての株式を売却する契約を締結。これによりカナダでの原子力事業から同社は完全に撤退
2/28 東京電力は経産省原子力安全・保安院に対し、過去14年間に遡った自主点検作業記録の総点検結果について「不正の事案はなし」との最終報告書を提出  
3/7 東京電力が原子力発電所自主点検データ不正問題に関連し、再発防止策の実施状況を経産省に提出 北朝鮮の朝鮮中央通信、各施設を再稼働させたと報道
3/19   リトアニア政府、イグナリナ発電所敷地内に使用済み燃料の中間貯蔵施設を建設する許可を正式に発給▼イギリス・アメリカ軍が未明にイラクを爆撃。イラク戦争勃発
3/20 柏崎市議会の三月定例本会議において、全国初となる使用済み核燃料に課税する条例を賛成多数で可決 スウェーデン政府、2003年末とされていたバーセベック2号機(BWR:61万5,000kW)の早期閉鎖期限を2004年末まで延期することを議会に提案。議会は6月に最終判断をする予定
3/21 経産省原子力安全・保安院は、新潟県柏崎市で東京電力の不正問題への対応を説明する初の立地住民説明会を開催。以後同様の説明会を立地地域で開く スイス議会の両院は原子力オプションの維持に可能性を残す新たな原子力法案を可決
3/25 サイクル機構、韓国原子力研究所は、高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発分野における協力取り決めに調印  
3/29 サイクル機構は、新型転換炉「ふげん」の運転を終了  
3/31   フィンランドのティオリスーデン・ボイマ(TVO)社が計画している同国5基目の原子炉の入札を締め切ったと発表
4/4 原子力安全・保安院は、2002年度の原子力施設におけるトラブルについて取りまとめ、発表。2002年度に報告されたトラブルは12件、原子炉1基当たり0.2件で、過去最低の発生率であったことが判明した。 カナダ原子力安全委員会(CNSC)は1998年以降運転を休止していたブルースA発電所3・4号機(CANDU:各90万4,000kW)に対し条件付ながらも運転再開を許可
4/9   アメリカ政府、イラク戦争においてバグダッドを制圧し、フセイン政権が崩壊したと発表
4/11   1997年に閉鎖したオランダのドーデルバルト発電所(5万8,000kW)が最後の使用済み核燃料を所外に搬出したと発表
4/15 東京電力は一連のデータ不正問題などを受け、東京電力所有の全原子炉17基を停止▼「国民の理解を求めて-原子力のさらなる発展のために」をテーマに36回原産年次大会が敦賀市、福井市の2会場で開催 ドイツのトリッティン環境・原子炉安全相はミュンヘン工科大学で完成していたFRM-2研究炉の起動を条件付で認める政府決定を発表
4/23   北朝鮮の核開発をめぐり、米朝中の3カ国協議が開催、翌24日、李根・北朝鮮外務省米州局副局長がアメリカ・ケリー国務省次官補に対し、非公式ながら核兵器の保有を認める発言をする
5/1   アメリカ・ブッシュ大統領、空母リンカーンの艦上でイラク戦争の終結を宣言
5/7 東京電力の原子炉全基が停止して以来、約三週間ぶりに柏崎刈羽6号機(ABWR:135万6,000kW)が地元関連三首長の再開容認を受け運転を再開。以後順調再開  
5/8 経産省が平沼赳夫経済産業相を本部長とする関東圏電力供給対策本部を設置、夏期に向けた電力供給対策を決定 イギリス・BE社の再建計画の支援を目的とした電気事業改正法案が成立
5/16 九州電力は川内3号増設計画に関しての環境調査の実施を了承する旨の回答を、須賀龍郎鹿児島県知事より受理したと発表  
5/18   スイスで実施された国民投票の結果、約6割の反対で新規原子力発電所の建設凍結や段階的な原子力発電所の閉鎖を求める2つの反原子力発電所国民請願を否決した
5/20   フィンランドのPOSIVA社、地下研究施設(ONKALO)の建設許可を当局に申請
5/23 文部科学省(文科省)が第13回原子力二法人統合準備会議を開き、原研とサイクル機構に現存する原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の処理処分の費用を約2兆円、実施期間約80年との見積もりを示す。年間100億~300億円が必要だが、新法人の財務能力の範囲内で可能、との見通しを示した  
6/7 小泉純一郎首相と訪日している慮武眩韓国大統領が北朝鮮の核開発問題について、日韓首脳共同声明を発表。北朝鮮の核保有や、いかなる核開発も容認しないこと、この問題を平和的、外交的に解決することで合意  
6/10   アメリカ上院が本会議にて、原子力発電所の新設に対して財政面で国が支援することなどを盛り込んだ規定を包括エネルギー法案から削除するとした修正動議を否決▼スエーデン議会、2003年末とされていたバーセベック2号機(BWR:61万5,000kw)の早期閉鎖時期を2004年末まで延期することを承認
6/12 原子力安全・保安院が柏崎市で住民説明会を開催。平沼赳夫経済産業相が立地地域の長年にわたる協力に対し謝意を述べるとともに、一連の不祥事を未然に防止できなかったことを直接陳謝した  
6/14   高速増殖炉原型炉フェニックス(FBR:25万kW)、約4年半ぶりに運転を再開
6/16 鹿児島県警と第十管区海上保安本部は同県警本部において、九州電力・川内原子力発電所のテロに備えた共同図上訓練を行う。原子力発電所の警備で、警察と海保が共同で訓練を行うのは初めて  
6/24   イギリス政府、原子力廃止措置期間(NDA)の設立法案を発表。同案に対する意見を聴取した後、2003年内に議会に提出予定
6/26 杉山粛むつ市長が市議会において、使用済み燃料中間貯蔵施設誘致を正式表明  
7/2 経産省は、北海道電力が計画している泊3号機(PWR:91万2,000kW)の増設計画について設置を許可▼サイクル機構の高速実験炉「常陽」がMK-Ⅲ炉心で初臨界を達成  
7/3   イギリスのP・ヒューイット貿易産業相は、政府がBNFLの部分民営化計画をこれ以上持続しないと議会に表明
7/11 北海道幌延町において核燃料サイクル機構幌延深地層研究所の着工式が行われる  
7/22 原子力委員会、平成16年度から次期原子力研究開発長期計画にむけた検討を始めると表明  
7/24   韓国の産業資源部は同国初の放射性廃棄物処分場を全羅北道扶安郡の蝟島を立地候補地に設定
7/25 資源エネルギー庁、エネルギー基本計画案を発表。同基本計画は2003年6月に成立したエネルギー政策基本法に基づいて作成されるもの  
8/14   アメリカ東海岸を中心に大規模停電が発生。この停電の際、アメリカ東部の9基の原子力発電所が停止▼フランス放射性廃棄物管理庁(ANDRA)、パリ北東部モルヴィリエにおいて同国初の極低レベル放射性廃棄物(VLLW)専用貯蔵施設の操業を開始
8/15   オーストラリア連邦産業・科学・資源省(DISR)、オーストラリア放射線防護・原子力安全省に対し国立低レベル廃棄物処分場の建設・操業を申請
8/21 日本原子力研究所(原研)、ヨウ素と硫黄を用いたISプロセスによる水の高温熱分解で水素の連続発生を世界で初めて成功したと発表  
8/26 政府が「使用済み燃料管理および放射性廃棄物の安全に関する条約」に加入することを閣議決定  
8/27   中国・北京において北朝鮮の核兵器開発をめぐる6カ国協議が開催
8/29 原子力安全委員会、「もんじゅ」判決と東電問題を特集した2002年度原子力安全白書を閣議に報告、公表  
9/2 文部・経済産業省、2002末時点のわが国の分離プルトニウム保管量は5.4トンであると原子力委員会に報告 インド政府、高速増殖炉原型炉PFBR(FBR:50万kW)のタミルナドゥ州のカルパッカム・サイトへの建設計画を閣議で了承
9/4   世界原子力大学がロンドンにて設立式を執り行い、前IAEA事務局長のH・ブルックス氏が初代学長に就任
9/18 総務省は、柏崎・川内両市から申請があった「使用済み核燃料税」の創設に同意。使用済み核燃料への課税は全国初  
9/19 文部科学省、原子力二法人統合準備会議で最終報告書を了承、報告書を大臣に手交 IAEAの第47回通常総会において北朝鮮に核兵器開発の全面中止を求める決議案を採択
9/25   アメリカの電力会社エクセロン・ジェネレーション社とドミニオン・エネジー社は、クリントン・サイト(イリノイ州)とノースアナ・サイト(バージニア州)に初の事前サイト許可(ESP)をアメリカ原子力規制委員会(NRC)に申請
9/30 JNC、新型転換炉開発業務を終了したと原子力委員会に報告 オランダ政府、高レベル放射性廃棄物中間貯蔵施設(HABOG)の開所式を行い、最初の高レベル廃棄物を貯蔵
10/1 原子力発電所の事故再発防止を目的とした改正電気事業法および改正原子炉規制法が施行▼独立行政法人原子力安全基盤機構が設立。国が行う原子力発電所の検査の一部を担当及び事業者審査も行う  
10/3   北朝鮮・寧辺の5MWe重水炉が運転を再開と国営朝鮮中央通信が報道、また、約8000本の使用済燃料棒の再処理を6月末までに終了したと発表
10/6   ブラジル政府、2004年から遠心分離機による濃縮ウランの生産を開始すると発表
10/7 政府、「エネルギー基本計画」を閣議決定。同日、国会に報告  
10/9 東京電力・福島第一発電所2号機(BWR:78万4000kW)の圧力抑制室から異物見つかる  
10/16   フィンランドのティオリスーデン・ボイマ・オイ(TVO)社、同国5基目となる原子力発電所をオルキルオト・サイトに建設することを決定。また、炉型は世界初の欧州加圧水炉(EPR)を選択
10/25 文部科学省「もんじゅシンポジウムin敦賀」を開催  
11/11 総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会コスト等検討小委員会第4回会合において、バックエンドサイクル事業のコストの全容が明らかに、事業総額は80年で18.9兆円  
11/14   ドイツ・シュターデ原子力発電所(PWR:67万2000kw)、経済的な理由により早期閉鎖。同国の新原子力法の施行後、初のケース
11/19 経済産業省・資源エネルギー庁、東京電力・東通原子力発電所1・2号機立地に係わる第1次公開ヒアリングを開催  
11/21 北海道電力・泊3号機(PWR:91万kW)の増設について、経済産業省の認可を受け着工へ 朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)、北朝鮮での軽水炉建設事業を2003年12月1日から1年間停止すると発表
11/26   EUの閣僚会議において、ITERの候補サイトをフランスのカダラッシュに一本化
12/5 中部電力・北陸電力・関西電力の3社、珠洲原子力発電所建設計画を電力需要の伸び悩み等の理由により凍結を表明  
12/8   1953年の国連総会でアメリカ・アイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォア・ピース」演説から50年をむかえ、世界中で記念行事が行われる
12/18   イラン・サレヒIAEA大使、保障措置追加議定書に調印
12/18   フィンランドのTVO社、フラマトムANPとシーメンスのコンソーシアムとの間でオルキルト3号機建設の契約を締結。初の欧州加圧水型炉(EPR)を採用し、出力は170万kW。2009年運転開始予定
12/19 原子力委員会、約5年半ぶりに2003年度版原子力白書を発表 リビア政府、核・化学・生物等の大量破壊兵器の開発を行ってきたことを認め、長距離ミサイルとともに廃棄すると発表。同日ブッシュ・アメリカ大統領もアメリカとイギリスがリビアと大量破壊兵器計画の即時かつ無条件の廃棄で合意したと発表
12/23   カナダ政府、ITERから脱退する旨の書簡を参加各国・極の担当大臣に提出
12/24 東北電力、新潟県巻町に計画していた巻原子力発電所の建設断念を正式決定  




2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
2003年
(平成15年)
3/12   世界保健機構(WHO)が新型肺炎(SARS)の警告、各国で猛威を振るう
3/19   英米軍がイラク攻撃開始
6/1   フランスのエビアンでサミットG8始まる
8/14   カナダ・米国で大規模停電

<関連タイトル>
2002年(平成14年) (17-01-07-03)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議:原子力年鑑2005 総論 (2004年10月)p.127-131
(2)日本原子力産業会議:2003年原子力界の主な動き、原子力産業新聞(2003年12月18日)
(3)日本原子力産業会議:2003年回顧、原子力産業新聞(2003年12月18日)
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