<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> リトアニア
<タイトル>
リトアニアの国情およびエネルギー事情 (14-06-05-01)

<概要>
 東北全県を合わせたよりもやや小さい面積を有するリトアニアは、歴史的に、石炭、石油、及び天然ガスなどの供給を旧ソ連(現、ロシア)に依存してきた。そのため、同国のエネルギー基盤は、脆弱である。一方、旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)である150万kWのイグナリナ原子力発電所2基を所有するリトアニアは、電力供給の約8割を原子力に依存し、ロシア、エストニア、ラトビア、ベラルーシなどの周辺諸国へ電力を輸出していた。しかし、2004年3月、拡大EUに加盟したリトアニアは、発電所の安全性を懸念され、1号機が2004年12月末に、2号機が2009年12月末に運転を停止した。以降、近隣諸国からの輸入電力で国内電力需要を賄っているため、エネルギー・セキュリティの観点から代替電源の確保は国家的最優先事項と位置づけている。
<更新年月>
2012年11月   

<本文>
1.国情
(1)面積と人口
 バルト三国のうち最も南に位置し、東はベラルーシ、南はポーランドと接する。面積は6万5,200km2で、東北全県を合わせたよりもやや小さい。大部分が平坦な低地で、2,800以上の大小の湖がある。海洋性、大陸性が混じり合った気候で、年平均気温は6.1℃である。人口は319.9万人(2011.12 リトアニア統計局)で静岡県程度。人口密度は約50人/km2である。公用語はリトアニア語で、民族構成はリトアニア人83.7%、ロシア人5.3%、ポーランド人6.6%、バルト語族に属する。
 バルト地域は、昔から欧州文化を受け入れ、西欧的な伝統を持っている。そのため反ロシア意識が強いといわれる。1991年9月6日旧ソ連邦から独立した。リトアニアは元々農業・林業国であり、同分野の生産は1999年にはGDPの8.8%を占めていたが、2010年には3.0%に減少している。
(2)政治
 リトアニアはポーランドと王国を形成(1336年成立)していたが、1795年以来同国の大部分がロシア帝国領となった。1920年当時ソ連は同国の独立を承認したが、ナチス・ドイツと1939年に結んだ独ソ不可侵条約の秘密議定書の中でソ連に帰属することが明記され、1940年8月に同国はソ連に併合された。ゴルバチョフ政権下で独立機運が高まった1988年10月、人民戦線組織サユジス(ランズベルギス議長)が結成され、1989年8月には独ソ議定書の無効を宣言。1990年2月の最高会議選挙でサユジスが圧勝し、3月11日に独立宣言が採択された。ゴルバチョフ政権は独立運動弾圧のため、世界最大出力で同国唯一の原子力発電所イグナリナ発電所(150万kW、黒鉛減速チャネル型炉:RBMK、2基)の燃料供給停止などの経済封鎖で圧力を加えたが、リトアニア国民の反ソ連感情が増し、独立の気運は益々高まった。その後、クーデターなどを経て、ソ連国家評議会は1991年9月6日同国の独立を承認した。
 独立後のリトアニアは欧州への復帰を目指し、欧州連合(EU)加盟及び北大西洋条約機構(NATO)加盟が最大の外交目標であった。EU加盟に関しては2004年5月1日、他の東欧諸国とともに正式に加盟した(2003年5月の加盟批准国民投票では90%を越える圧倒的支持)。
 また、1994年に「平和のためのパートナーシップ」に参加して1998年に他のバルト諸国とともに「米・バルト憲章」を締結。2004年3月29日に正式に加盟した。
(3)経済
 1991年以降市場経済化に向けた諸改革を推進し、積極的な税制改革や国営企業の民営化等を通じ、マクロ経済指標は大幅に改善した。特に外国からの直接投資の増大や輸出入の拡大により、近年では7%台の着実な経済成長を達成した。しかし、2008年後半からの世界的金融危機の影響を受け、経済状況は急激に悪化。2009年の経済成長率はマイナス14.96%に達した(IMF調べ)。さらに、2011年後半からは欧州債務危機の影響をうけ、国内主要銀行の倒産等により経済状況は悪化している。財政支出削減、税制改革を主軸とする経済危機政策を実施し、財政赤字削減及び景気回復にむけ尽力しているものの、財務省は2012年の経済成長率予測を4.7%から2.5%へ下方修正している。貿易相手国は、ロシア、ドイツ、ラトビア、ポーランドが中心で、2011年の総輸出額の61.5%(輸出品:石油製品、電気機器・機械類、化学製品)及び総輸入額の57.5%(輸入品:原油・天然ガス、電気機器・機械類、化学製品)はEU諸国が占めている。ロシアとは比較的良好な関係を維持している。
2.エネルギー事情
 リトアニアはエネルギー資源に乏しく、化石燃料の多くを輸入に依存している。従来、ソ連の中央統制経済のもとで資源と燃料の供給を受け、家電製品や工作機械を製造する部門を分担してきたため、同国のエネルギー基盤は脆弱である。旧ソ連時代には、リトアニアだけでなくラトビア、ベラルーシ、ロシアのカリーニングラード地方への電力供給を目的として、イグナリナ原子力発電所1号機が1985年に、2号機が1987年に運転を開始した。そのため、原子力の一次エネルギー供給量に占める割合は約3分の1を占め、総発電電力量に占める原子力の割合は8割前後で推移した。しかし、イグナリナ発電所が事故を起こしたチェルノブイリ発電所と同じ旧ソ連製の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK-1500)であったことから、EUは同発電所の安全性に懸念を表明した。リトアニア政府は2004年5月のEU加盟と引き換えに、同1号機を2004年末に、同2号機も2009年末に閉鎖した。
 現在リトアニアは、EUからの資金援助を得て、安全に両機のデコミッショニング作業を進める一方、議会は2009年3月、イグナリナ発電所に代わる新たな原子力発電所として、ラトビア及びベラルーシとの国境に近いイグナリナ発電所サイト隣接区域にヴィサギナス原子力発電所の建設を認める法案を採択。新規原子力建設は2008年8月に発足したヴィサギナス原子力発電社(VAE)を中心に2018年〜2020年の運転開始を目指して着々と計画を進めていた。2011年7月には戦略投資家としてGE日立ニュークリア・エナジー社と契約を結んでいたが、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故や巨額な建設費用が問題となり、2012年10月にヴィサギナス発電所建設の是非を問う国民投票が実施された。投票結果は直接拘束力を持たないものの、反対63%:賛成34%と反対意見が上回った。また、11月には社会民主党へ政権が交代し、首相はヴィサギナス原子力発電所を建設しないと発表している。表1にリトアニアの原子力発電所の概要を、図1に所在地図を示す。
(1)エネルギー需給
 リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所の運転停止前後で大きく一次エネルギー需給バランスが異なる(表2参照)。リトアニア統計局によると2009年の国内一次エネルギー生産量は434.6万石油換算トン(toe)であるのに対し、輸入量は1180.7万toeに上る。輸出量は750.4万toeで、バルト諸国で唯一石油精製設備を所有していることから、石油製品が輸出量の約9割を占める。一次エネルギー国内生産量の内訳は、原子力が282.8万toeで65.1%、石炭が101.8万toeで24%、原油が11.9万toeで2.7%、水力が3.7万toeで0.8%であった。また、エネルギーを消費量は家庭用が34%、輸送用が33%であった。
 2010年以降のエネルギー生産は、エネルギー不足には陥らなかったもののロシアからの天然ガス輸入が増加し、エネルギー価格が上昇する傾向にある。2011年の国内一次エネルギー生産量は153.8万toeであるのに対し、輸入量は1430.2万toeで、輸出量は843.2万toeであった。風力、地熱エネルギー等再生可能エネルギーの生産高が僅かに増加しているが、2011年の国内一次エネルギー生産量は2009年(434.6万toe)と比較して35%まで落ち込んだ。
 なお、リトアニアのエネルギー基本政策である(1)エネルギー安全保障の強化、(2)エネルギー効率の向上、(3)環境への負荷軽減、(4)地域間協力、(5)運営改善のほか、2007年1月に策定された第4次国家エネルギー戦略では、送電網の整備及び新規原子力発電所の建設を目指すことが戦略に加えられている。
(2)電力事情
 リトアニアの総発電電力量は、1983年に122億kWh、1985年に210億kWh、1991年に294億kWhと、旧ソ連邦崩壊以前順調な伸びを示したが、1991年12月の旧ソ連邦崩壊を引き金に急激に減少し、1994年には100億kWhとなった(表3参照)。火力発電の発電電力量はロシアからの化石燃料輸入に頼るため急激に減少したが、イグナリナ原子力発電所1・2号機による電力供給は順調で、その割合は、1990年の60%から1995年には85%へ増加し、2004年には国内総発電電力量約193億kWhの78%を占めた。2号機のみの運転であった2009年には、総発電電力量は約153.6億kWhで、そのうち70.7%は原子力発電によるものであった(表4参照)。2011年現在、原子力による発電量はゼロ、総発電電力量は48.2億kWhと、発電電力量は3分の1に減少した。図2に電力需給バランスの推移を示す。その結果、リトアニアは電力需要のほとんどをロシア、ベラルーシ、ラトビアから輸入している(図3参照)。電力輸入量は2009年の7億kWhから2011年は87.1億kWhまで増大した(表4参照)。
 リトアニアはEUとの連携線を直接は持っていない。そのため、連携線はすべてUPS/IPS(旧ソ連・東欧圏をカバーする連携線)であり、今後リトアニアの電力需要が増大した場合、ロシアからの電力輸入が大きなシェアを占めることは容易に予想できる。また、火力発電設備も燃料となる石油や天然ガスもロシアから輸入するため、エネルギー・セキュリティの観点から代替電源の確保が国家的最優先事項と位置づけられている。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 リトアニアの原子力発電所概要
表2 リトアニアのエネルギー需給バランス
表3 リトアニアの電源別発電電力量の推移(〜2000年)
表4 リトアニアの電源別発電電力量の推移(2001年〜)
図1 イグナリア原子力発電所の所在地図
図2 リトアニアの電力需給バランスの推移
図3 リトアニアの電力輸出入状況と送電系統図

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<関連タイトル>
リトアニアの原子力発電開発と原子力政策 (14-06-05-02)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2012年版(2012年5月)
(1)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2012、リトアニア(2011年10月)
(2)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 2010年版、リトアニア(2010年5月)
(4)(社)海外電力調査会:海外電気事業統計2004、(2004年9月)p.297
(5)Ignalina Nuclear Power Plant :http://www.iae.lt/en/
(6)リトアニア経済省:Lietuvos_energetika Energy in Lithuania2010(2011年)、http://www.lei.lt/_img/_up/File/atvir/leidiniai/Lietuvos_energetika-2010.pdf
(7)リトアニアエネルギー省:Electricity balance, 2001-2011(http://www.ena.lt/en/Electricity_balan.htm)及びEnergy balance, 2001-2011(http://www.ena.lt/en/Energijos_istekliai_angl.htm)
(8)外務省:リトアニア、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/lithuania/data.html
(9)武田充司:リトアニア共和国イグナリナ発電所1号機の閉鎖をめぐって、日本原子力学会誌、(2000年12月)
(10)(社)日本原子力産業協会:リトアニアの原子力事情、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2010/lithuania-report100702.pdf
(11)リトアニア送電システム(LITGRID):Grid Diagram and Specifications (2012年2月)
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