<本文>
1.日英協定の締結に至る経緯
英国が開発したコールダーホール型ガス冷却炉の導入をはかるため、1958年に最初の日英原子力協定(日英協定)が締結された。この協定の正式名称は、「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定」(Agreement Between The Government of Japan And The Government of The United Kingdom of Great Britain And Northern Ireland for Co-operation in The Peaceful Uses of Atomic Energy)という。この協定は、日本が英国から一方的に
原子炉等の供給を受けるとの立場を反映して、日本に対していくつかの規制がかかっていた。その後、同原子力協定の有効期限満了にともない、従来の片務的なものから相互主義にもとづくものに改訂され、1968年3月に署名、同年10月15日に発効した。この協定の有効期間は30年で、1998年に全面改訂されている。
2.日英協定の内容
日英協定による協力の条件として、1)平和目的への限定、2)第三国移転での事前同意、3)IAEA
保障措置の適用、4)特殊核分裂性物質の返還請求権などが定められている点は、他の原子力協定の場合と同様であるが、日英協定では、核爆発利用の禁止、再処理の規制、形状・内容の変更、20%以上の濃縮の規制、
プルトニウム・高濃縮ウランの貯蔵の規制、事前通告制、
核物質防護(PP)措置などが協力の条件としては規定されておらず、この点、他の原子力協定と異なっている。
協定は、協定本体と協定に関する了解覚書からなっている。それぞれの構成は以下のとおりである。
(1) 協定本体
前文
第1条 相互協力の方法
第2条 原子炉の運転に必要な燃料、資材及び役務の供給
第3条 設備、施設及び資材の平和的利用の確保等
第4条 保障措置の適用に関する国際原子力機関との取極
第5条 国際原子力機関の保障措置が適用されていない場合の供給当事国政府の権利等
第6条 情報の正確性、資材の適合性等の保障
愛7条 協議
第8条 1958年の協定及び同協定に基づく契約の下で移転された情報、資材、設備及び施設に関する権利・義務
第9条 定義
第10条 効力発生、有効期間及び廃棄
末文
(2) 協定に関する了解覚書
1.協定改正の為の協議
2.協定第5条(a)(i)の規定による設計審査の対象
(a)(i)の規定:国際原子力機関の保障措置が適用されていない場合の供給当事国政府の権利
3.実際に行われている主な協力関係
現行協定は協力の方法として、イ)情報の提供・交換、ロ)
核物質、設備、施設等の供給、ハ)役務の提供等を規定しているが、現在行われている協力としては、イ)天然ウランの輸入、ロ)日本の電力会社による英国核燃料会社(BNFL)に対する
原子力発電所の使用済燃料の再処理委託業務等がある。
<関連タイトル>
日英原子力協定(1998年) (13-04-02-12)
<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2)外務省原子力課(監修):原子力国際条約集,(社)日本原子力産業会議(1993年6月)
(3)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック 1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4)原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)
(5)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1994年3月)
(6)(社)日本原子力産業会議(発行):原子力ポケットブック 1998/99年版、(1999年2月)p.298
(7)科学技術庁原子力局・原子力安全局(監修):原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定、第1編、加除式「原子力関係法規集」全3巻(濃緑表紙)、(株)大成出版社、p.45ノ二−45ノ六
(8)科学技術庁原子力局・原子力安全局(監修):Agreement Between The Government of Japan And The Government of The United Kingdom of Great Britain And Northern Ireland for Co-operation in The Peaceful Uses of Atomic Energy、第4編、加除式「原子力関係法規集」全3巻(濃緑表紙)、(株)大成出版社、p.84-94