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国がその全部を所有、経営する公企業の1つ、核燃料サイクル開発機構(サイクル機構:Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC)では、放射性廃棄物(特に高レベル廃棄物)、高速増殖炉と関連の燃料サイクルおよび重水炉の研究分野で、同様の研究開発を進めている諸外国の研究開発機関と、共同研究を実施し、また国際共同研究プロジェクトに参画してきている(
表1参照)。
サイクル機構が、上記三つの研究分野において、諸外国の研究開発機関と国際協力・共同研究を進めるのは、以下のような理由による。
(1) これらの分野は、国際的に共有される多くの課題が含まれていること。
(2) これらの分野の研究開発には、多数の学問領域が含まれ、しかも、その結果を総合的に評価する必要があること。
(3) 国際協力・共同研究によって、各国の先端技術や施設の効率的な活用ができること。
(4) データの質と量の向上、技術や評価の信頼性の向上、あるいは安全論理の構築等の面でも、非常に有益であること。
1.放射性廃棄物の処理・処分
サイクル機構が、放射性廃棄物、特に高レベル廃棄物の処理技術開発、地層処分研究および地層科学研究の分野で実施している国際共同研究の内容を、各国別に見てみると、以下のとおりである。
(1) 日米共同研究
1)パシフィックノースウエスト国立研究所(PNNL)
放射性元素が地下深部の地下水にどのように溶解するかを研究するため、地上にある実験室内で地下深部の地下水の条件(酸素濃度や温度など)を模擬できる装置を用いて実験を行うとともに、その理論的解明を進めている。(期間:1997年〜2000年)
2)ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)
地下水によって放射性元素が地層中を移動する現象について、場としての地層が有する不均質な構造を考慮しながらモデルを作成するとともに、そのモデルに基づく解析結果と実際にフィールドで行った試験結果との比較を行い、モデルの信頼性を高める研究を行っている。(期間:1997年〜2000年)
3)サンディア国立研究所(SNL)
地下に処分した放射性廃棄物が将来どのようにふるまうかについて、予測評価の方法を開発するため、鍵となる現象のモデルを作成するとともに、その信頼性を高めるための実験室やフィールドでの試験方法の開発を行っている。試験施設としてサイクル機構の地層処分基盤研究施設(ENTRY)とサンディア国立研究所のFlow Visualization and Process Laboratoryを活用している。(期間:1997年〜2000年)
(2)日・スイス共同研究
スイスは日本と同様に地殻変動が活発な地域にあるため、放射性廃棄物の地層処分を考えるうえで多くの共通性を有しており、双方にとって重要な種々のテーマについて共同研究を行うとともに、相互の研究成果の評価と情報交換を積極的に行っている。その一つとして、スイス国立放射性廃棄物処分組合(Nagra)とアルプス山中にあるグリムゼル岩盤研究所において、実際に微量の
放射性核種を岩盤に注入し、その動きを調べる試験を実施している。(期間:1997年〜2000年)
また、スイス・モンテリー山系のトンネルを利用した調査坑道において実施されている多国間国際共同プロジェクト・(Mt.Terri Project/期間:1996年〜1999年)ヘも参加している。
(3)日英共同研究(AEAテクノロジー(AEAT))
放射性元素が地層中を移動する際に、どの程度地層に吸着するかについて、これまで行われてきた試験結果や理論的研究を整理し、そのメカニズムを解明するための情報交換を行っている。(期間:1991年〜1998年)
(4)日・スウェーデン共同研究
スウェーデン核燃科廃棄物管理公社(SKB)がスウェーデン南部のエスポ島で実施している結晶岩石を対象とした地下研究(HRL計画:Hard Rock Laboratory Project)に参加し、放射性廃棄物の地層処分に関するサイトの適正及び処分システムの安全性等を示すために必要な調査解析手法や処分場の設計・建設等の確立を目指した研究を行っている。(期間:1994年〜1998年)
(5)日加共同研究(協力機関:カナダ原子力公社[AECL])
カナダ原子力公社(AECL)のホワイトシェル研究所にある地下研究施設(RRL:Underground Research Labratory)では、トンネルを掘削するときにできる岩盤のゆるんだ部分を通って、地下水や物質が動くのをできるだけ防ぐために、ゆるんだ部分を拡幅して、粘土でできたプラグ(栓)とコンクリートのプラグを作り、その間に圧力をかけた水を入れて、試験を行っている。この試験で、プラグなどを作る技術や、どれくらい地下水や物質の動きを防ぐことができるかという性能を確認する。(期間:1995年〜2000年)
2.高速増殖炉及び重水炉
(1)
高速炉の国際共同研究
1)日欧高速炉協力(期間:1994年〜2000年)
欧州機関と高速増殖炉に関する情報交換等の協力を行う。
2)カブリ・ラフト計画
フランス原子力庁の
CABRI炉を使用して高速増殖炉の反応炉心崩壊事故時の事象推移の研究を行っている。(期間:1996年〜2002年)
3)シンフォニー計画
地震が起ったときの大型炉心での挙動を把握し、炉心の耐震安全性の研究を行っている。
4)SIMMER-3コード開発協力
フランス原子力庁(CEA)、ドイツ・カールスーエ研究所(FZK)と協力して、高速炉の炉心崩壊事故を評価するためのコンピュータ・プログラム(SIMMER-3)の開発を行っている。(期間:1995年〜1998年)
(2)重水炉の研究
1)日加重水炉協力
カナダ原子力公社(AECL)と重水炉に関する情報交換等を行っている。(期間:1981年〜2001年)
<図/表>
<関連タイトル>
動力炉・核燃料開発事業団(PNC) (13-02-01-12)
<参考文献>
(1) 原子力委員会(編):原子力白書、大蔵省印刷局(1997年3月)
(2) 日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック1997年版,日本原子力産業会議(1997年5月)
(3)核燃料サイクル開発機構インターネットホームページ,
(4)原子力委員会(編):原子力白書 平成10年版、大蔵省印刷局(1998.3.31)