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<概要>
 日本における原子力施設の安全確保については、法律により中央の行政庁だけが統一した規制(監督)をすることになっている。他方、地域住民の安全を担う地方公共団体(地方自治体)は住民の立場で原子力事業所の安全施策実施状況を確認する必要があるため、その方策として考えだされた仕組みが「原子力安全協定」である。これは原子力事業所が地元の県、所在市町村、隣接市町村と結ぶ協定で、主な内容は次のようなものである。
・周辺環境における放射線の共同監視(通常は事業者、地方自治体、国の三者がそれぞれ測定)
・異常時等における情報の迅速な連絡・通報義務
・地方自治体による立ち入り調査・安全措置要求の受け入れ
・施設の新設または増設、変更に対する地元の事前了解
<更新年月>
2011年08月   

<本文>
 日本の原子力に関する法令は、原子力事業者が施設を安全に設計、建設、運転、維持管理するために行うことを定めたもので、国の行政庁だけが一元的に監督をすることになっている。地域住民の安全に責任を持つ地方公共団体(地方自治体)には、事業所に対し安全面で要求をする法的な権限は与えられていない。一方、災害対策基本法では原子力災害に対して地方自治体が対応することになっている。
 このような状況において、地元の自治体としても住民の立場で原子力施設の安全を確認する必要があるため、県が中心となり、原子力施設のある所在市町村、ならびに隣接市町村を含め原子力事業所と結んだ安全に関する協定を原子力安全協定という。
 例として茨城県における原子力安全協定締結の事業所と自治体及びその範囲を図1に示す。原子力安全協定の主要内容を表1に示す。茨城県では、2011年7月、日本原電(株)東海第2発電所を念頭に、安全協定の広域化について県央地域9首長が合意し茨城県知事に申し入れを行った。安全協定広域化で合意したのは、水戸、笠間、ひたちなか、那珂、小美玉の5市長、茨城、大洗、城里の3町長、及び東海村長である。
 なお、安全協定の具体的条文は、例えば福井県のホームページに示されている(参考文献4)。また、福島県では、1969年4月に東京電力(株)と「原子力発電所の安全確保に関する協定」が締結されており、さらに1976年3月には、地域により密着した原子力安全行政の推進のため、二者協定から立地町を加えた三者協定が結ばれている(参考文献5)。
 2011年8月、関西広域連合は原発に対する情報提供の徹底などを盛り込んだ「原子力安全協定」の締結を関西電力に申し入れた。関西広域連合に加盟する徳島県も伊方原発(愛媛県)に関し、関西広域連合と協定を締結するよう四国電力に申し入れたほか、鳥取県も中国電力への申し入れ準備を進めている。
(前回更新:2003年3月)
<図/表>
表1 茨城県における原子力安全協定の主要内容
表1  茨城県における原子力安全協定の主要内容
図1 茨城県における原子力安全協定締結の事業所及び自治体
図1  茨城県における原子力安全協定締結の事業所及び自治体

<関連タイトル>
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
公開ヒアリング (11-01-01-03)

<参考文献>
(1)茨城県生活環境部原子力安全対策課:茨城県の原子力安全行政、(1994年3月)
(2)福井県原子力安全対策課:福井県の原子力(改訂第10版)、(2000年3月)
(3)茨城県:茨城県原子力安全協定集、(2000年10月)
(4)福井県ホームページ:http://www.atom.pref.fukui.jp/anzen/kyotei01.pdf
(5)福島県ホームページ:
(6)茨城県生活環境部原子力安全対策課:「茨城県内の原子力施設」

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