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<概要>
 2000年6月に施行された原子力災害対策特別措置法では、1999年9月に発生したJCO臨界事故の教訓の一つとして、原子力事業者の責務の明確化が図られ、原子力事業者は放射線測定設備(モニタリングポスト等)を設置し、放射線量を測定・記録するとともに、公表することが義務付けられた。また、放射線量の測定記録について紙面又は画面に表示し、これを公衆の閲覧に供する方法により行うことが義務付けられた。
 この措置法に基づいて設置された放射線測定設備の概要および環境放射線情報をリアルタイムで公表した例などについて以下に述べる。
<更新年月>
2002年01月   

<本文>
1.放射線測定設備の概要
 2000年6月に施行された原子力災害対策特別措置法(以下、「原災法」という)では、1999年9月に発生したJCO臨界事故の教訓の一つとして原子力事業者の責務の明確化が図られ、原子力事業者は、放射線測定設備(モニタリングポスト等)を設置し(第11条第1項)、放射線量を測定・記録するとともに、公表する(第11条第7項)ことが義務付けられた。また、原災法施行規則(第15条第1項)では、原災法に基づく放射線量の測定記録について紙面又は画面に表示し、これを公衆の閲覧に供する方法により行うことと定めている。
 原子力事業者は、原子力事業所内に1式以上の放射線測定設備を設置し、事業所境界付近におけるガンマ線による1時間当たりの放射線量を継続して測定することになった。また、この放射線測定設備には、検出された放射線量があらかじめ設定した値以上である場合の警報発生機能と、測定した数値の確実な記録機能を備えていることが必要である。一般にこの設備として、原子力事業者は事業所周辺の環境放射線監視を目的として設置、運転してきたモニタリングポストを使用しており、通常1分〜10分間隔で測定した値をテレメータシステム等により集中監視している。この監視システムは、事業所内に設置した環境放射線中央監視装置とモニタリングポストを専用回線や無線回線等で結び、モニタリングポストでの放射線測定結果をリアルタイムで収集し、監視するようになっている。モニタリングポストによるテレメータシステムの一般的な概念図を 図1 に示す。
2.リアルタイム環境放射線監視情報の公開例
 放射線測定設備により測定した放射線量の測定記録を公衆の閲覧に供する方法の一つとして、インターネットを活用したリアルタイム環境放射線監視情報公開がある。前項で述べたように、放射線測定設備による放射線量の測定結果は、テレメータシステム等を用いた監視システムによってリアルタイムで監視されており、これらの監視データは電子計算機へ収集記録されている。
 近年急速に発展したインターネットは、わが国においても企業や学校そして一般家庭へも広く浸透し、企業の広告や情報提供及び官公庁における情報公開の一手段としても広く活用されている。このインターネットにより、放射線測定記録をリアルタイムに公開した例を 図2 に示す。この例は、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)が行っているものであり、放射線測定設備(モニタリングポスト方式)の放射線測定記録について、10分間隔でのリアルタイム公開となっている。表示している数値は、モニタリングポストで測定した1分毎の空気吸収線量率に基づいて10分間の平均値を求めたものであり、実測データ取得から約5分後という早さで最新値の更新を行っている。 図3 では、過去12時間の線量率がトレンド表示で示され、降雨の影響等の自然放射線の変動を含む数値の変動が分かりやすくなっている。 図4 では、過去24時間の線量率の数値を一覧表として見ることができる。
 原災法では、気象観測及びその記録等については定められていないが、原子力事業所からの異常な放射性物質の放出があった場合の風向、風速および大気安定度は重要な情報であり、また、自然放射線の変動は降雨による影響がほとんどであるため、雨量および感雨(雨量計での検出値に満たない霧雨時等の雨の有無を検出する)の情報も併記することが環境放射線レベルの正しい理解を得るために重要なことである。
 このように、公衆がリアルタイムに放射線測定結果を閲覧できることは、原子力事業所における日常の運転状況を把握する上で重要であるとともに、原子力事業所周辺の環境放射線レベルが降雨等によっても変動することを理解する上で有効である。なお、日常の環境放射線レベルは、1時間当たり0.1μGy以下である場合が多いのに対して、原子力事故発生時に原災法に定められている通報の基準は、1時間当たり5μSv(=5μGy)と約50倍となっている。
<図/表>
図1 環境放射線テレメータシステム概念図(例)
図1  環境放射線テレメータシステム概念図(例)
図2 リアルタイム環境監視情報(マップ表示)
図2  リアルタイム環境監視情報(マップ表示)
図3 リアルタイム環境監視情報(トレンド表示)
図3  リアルタイム環境監視情報(トレンド表示)
図4 リアルタイム環境監視情報(数値一覧表示)
図4  リアルタイム環境監視情報(数値一覧表示)

<参考文献>
(1) 環境放射線モニタリングに関する指針、平成元年3月30日原子力安全委員会決定
(2) 発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針、昭和57年1月28日原子力安全委員会決定
(3) 日本原子力研究所:環境放射線監視情報(2002年1月15日)
(4) 核燃料サイクル開発機構:リアルタイム発信情報 環境放射線監視システム 東海事業所(2002年1月15日)
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