<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 環境中の放射能
<小項目> 環境中での移行と挙動
<タイトル>
旧ソ連・ロシアの放射性廃棄物海洋投棄による水産物中の放射能調査 (09-01-03-07)

<概要>
 旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄の影響を調査するため、1993年4月〜6月に海上保安庁、気象庁、水産庁、国立(現独立行政法人)放射線医学総合研究所による日本海の海洋環境放射能調査を実施した。これらの分析結果は、科学技術庁(現文部科学省)に設置された海洋環境放射能データ評価検討会(1993年8月27日)において審議された。また、これまで実施してきた日本近海各海域における海洋環境放射能調査結果についても同検討会において整理され、再評価が行われた。
 これらの結果を踏まえ、放射能対策本部は、日本周辺海域の環境放射能レベルに特段の異常は認められない事を確認した。
 その後、1994年には日本海域を対象に第1回、1995年には北西太平洋とその周辺海域を対象として第2回日韓露共同海洋調査が行われた。
<更新年月>
2003年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄については、1993年4月に開催された放射能対策本部幹事会の決定を受け、4月〜6月に海上保安庁、気象庁、水産庁、国立(現独立行政法人)放射線医学総合研究所による日本海の海洋環境放射能調査を実施した。その後、各機関において採取した試料の分析が進められ、8月には、本調査に係るすべての分析が終了した。また、水産庁が例年実施している日本海で漁獲された海産生物の放射能調査についても、この時点において、さらに調査結果が追加された。これらの分析結果は、科学技術庁(現文部科学省)に設置された海洋環境放射能データ評価検討会(1993年8月27日)において審議された。最終的な検討結果が得られるとともに、これまで実施してきた日本近海各海域における海洋環境放射能調査結果についても同検討会において整理され、再評価が行われた。
 本タイトルでは、これら調査結果の中で、主として水産物中の放射能調査結果について述べる。
2.本調査の実施状況
 旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄の我が国への影響の有無を調べるため、1993年4月から6月にかけて科学技術庁(現文部科学省)のほか海上保安庁、気象庁、水産庁により日本海の表面及び中・深層の海水、沖合の海底土を採取して分析が行われた。また、海産生物についても、水産庁および放射線医学総合研究所が、4月以降に日本海で漁獲されたものを入手し、分析が実施された。本調査の概要と実施内容を表1に示す。なお、表1には、海産生物だけではなく、上述した海水および海底土の調査についても示した。
3.調査結果に係る評価検討−海洋環境放射能データ評価検討会−
 評価検討に際しては、他海域を含めた過去の調査結果ともあわせて検討が行われた。調査結果は、表2のとおりである。
 海産生物については、ストロンチウム90、テクネチウム99、銀108m、セシウム137及びプルトニウム(239+240)が検出されている。ストロンチウム90、テクネチウム99、セシウム137及びプルトニウム(239+240)の4核種については、近年の調査結果と比較しても大きな相違はなく、異常な値は検出されなかった。したがって、これらは、かつての核実験等による放射性降下物に起因するものであると考えられる。参考のため、過去に実施した日本周辺海域における海洋環境放射能調査データを表3に示す。
 甲殻類のベニズワイガニでは、肝すい臓から108mAgが0.2Bq/kgの濃度で検出された。108mAgについては、1986年に実施された日本海海域での調査でも、同じ甲殻類のベニズワイガニから検出されている。さらに、太平洋から東シナ海にかけてタコやイカなどの軟体類では、0.023-0.41Bq/kgの範囲で幾つか検出されている。したがって、今回の測定値が特に異常に高いとは考えられず、かつての核実験等による放射性降下物に起因するものであると考えられる。
4.結論
 日本海における海洋環境放射能調査の結果について、放射能対策本部幹事会が、上記の調査結果から最終取りまとめを行った(1993年8月30日)。その概要は以下に示すとおりである。
 本調査結果においては、投棄海域近傍及びそれ以外で採取した試料からは異常は検出されず、さらに以前から実施してきた海洋環境放射能調査においても、これまでに特段の異常は検出されていないことも併せて考慮すれば、我が国国民の健康に対して影響が及んでいるものではないと判断できる。
 今後とも、我が国への放射能の影響について長期的に監視を続けることが必要であり、このため、日本海、オホーツク海を中心に海流に伴う放射性物質の移動等を考慮した放射能監視網の設定、従来の調査海域を拡大した幅広い海域での海洋環境調査等を継続して実施することが効果的であると考えられる。
5.その後の状況
 1993年10月、ロシアが行ったウラジオストック沖の日本海における液体放射性廃棄物投棄に際しても、投棄後直ちに海洋環境放射能調査を実施し(表4参照)、1994年2月の放射能対策本部幹事会において、調査結果にその影響が認められていないことを確認した。
 一方、1993年5月及び11月には、モスクワにて日露合同作業部会を開催し、投棄海域における共同海洋調査の実施等について協議を行った。これを受けて、日本海の投棄海域において1994年3月から4月(図1)にかけてと1995年8月から9月(図2)に、日本、韓国、ロシア及びIAEAの専門家による海洋調査を実施した。ロシア極東水理気象研究所所属の調査船「オケアン号」(図3)船上において実施した簡易放射能測定の結果は特に異常が認められていない。共同調査に参加した日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の報告によれば、1994年の結果は、放射生態学的に最も重要な核種の一つである137Csの放射能濃度は、海水と海底土においては、そのレベルが非常に低く、日本海における放射性降下物によるバックグラウンドレベルと異なるとこはなかった。海老、魚などの生物試料については船上の測定では人工放射性核種は検出限界以下であった。1995年の結果では、海水と海底土の試料中に検出された人工放射性核種は137Csのみであった。しかし、放射能濃度は低く、各投棄海域における濃度と対応するバックグラウンドレベルと同程度であった。
 1994年と1995年の海洋調査の最終報告は、1996年9月にモナコのIAEA-MELで開催された専門家会議での議論を経て報告書としてまとめられた。
<図/表>
表1 旧ソ連・ロシアの放射性廃棄物の海洋投棄に係わる日本海海洋環境放射能調査概況
表2 海産生物の放射能調査結果
表3 過去に実施した日本周辺海域における海洋環境放射能調査データ
表4 1993年10月17日の海洋投棄に係る海洋環境放射能調査の概要
図1 調査海域と航海経路(1994年)
図2 調査海域と航海経路(1995年)
図3 新潟港に入港する海洋調査船「オケアン号」

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<関連タイトル>
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<参考文献>
(1) 科学技術庁編:「第35回環境放射能調査研究成果文抄録集」平成4年度(1993.12)
(2) 原子力安全委員会編:原子力安全白書(平成6年版)p86
(3) 天野 光ほか:極東の放射性廃棄物投棄海域における環境放射能調査−第1回日韓露共同海洋調査における原研の調査−、JAERI-Research 96-049
(4) 外川織彦ほか:北太平洋とその周辺海洋の放射性廃棄物投棄海域における海洋放射能調査−第2回日韓露共同海洋調査における原研の調査研究−、JAERI-Research 98-062
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