完全黒体

完全黒体 かんぜんこくたい

 現実の物体は照射された電磁波を波長に応じて選択的に吸収するが、すべての波長の電磁波を吸収する物体を黒体と呼び、理論的に完全な黒体を完全黒体いう。吸収における波長の非選択性は放射に対しても該当し、完全黒体はすべての波長の電磁波を放射することができる。完全黒体から放射される電磁波(黒体放射という)のスペクトルは温度のみによって決まり、プランク分布と呼ぶ形状で表される。このプランク分布を全波長にわたって積分することにより、「完全黒体の放射エネルギー量はその表面温度の4乗に比例する」というステファン・ボルツマンの法則が導かれる。こうした完全黒体の理論を現実の物体に厳密に適用することはできないが、すべての物体が表面温度で概ね決まる強度と波長スペクトルの電磁波(人間の感覚では熱または光)を放出すること、赤色光を放つ物体の温度を上昇させると短波長の光成分が増えて黄色光から白色光に移行していくことなどが実験的に観察できる。


<登録年月> 2010年10月

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