物体が周囲の空間に放射する電磁波。あらゆる物体はその種類と表面温度に応じた強度と波長スペクトルの電磁波を放射する。強度とは毎秒のエネルギー移動量であり、物体の表面温度の4乗に比例する(シュテファン・ボルツマンの法則)。また、高温の物体では短波長域、低温の物体では長波長域を中心としたスペクトルとなる。電磁波は接触していない2つの物体間のエネルギー移動の手段であり、熱放射という呼称は、高温の物体から低温の物体に正味にエネルギーが移動し、低温の物体の温度が上昇することに由来する。例えば、表面温度6000Kの太陽は赤外線から紫外線までの幅広い波長の強力な電磁波を放射しており、地球表面には(反射分を控除して)平均約1kW/m2の電磁波が到達し、平均気温288Kに暖めている。他方、地球の表面気温は太陽よりもはるかに低いので、微弱な赤外領域の電磁波を宇宙空間に放射している。なお、物体間のエネルギーの移動方法には熱放射のほかに、熱伝導、熱伝達がある。