広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。それ以前の暫定評価方式であるT65D(Tentative 1965 Dose)と比べ、爆弾の出力、形状、放射線源のジオメトリ、放射線の伝播中の減衰、地上遮蔽物等の条件をきめ細かく考慮している。T65Dと比べると、広島ではγ線量がやや高くなり中性子線量は1/10に減少し、また、γ線の線量評価におけるリスク係数が2倍程度高くなった等の違いがある。この評価結果はその後、国連科学委員会報告書、BEIR-V、ICRPの1990年勧告等に反映されている。なお、広島の場合に1.5 km以遠の場所で中性子による放射化物の測定値とDS86による計算値とが合わない等の問題指摘があり、こうした点を解決し、さらに被ばく線量の推定精度を向上させた新評価方式としてDS02が2003年に公表され、その後の評価に使用されることとなった。