遷移沸騰領域

遷移沸騰領域 せんいふっとうりょういき

 原子炉の燃料棒のような伝熱体表面から液体への熱伝達においては、伝熱面の温度上昇に伴って熱流束(液体への熱の移動)が増加していくが、温度上昇のある範囲では逆に熱流束が低下する現象が起こり、この範囲を遷移沸騰領域と呼ぶ。液体が飽和温度以上に熱せられると、液体の中に気泡の形で蒸気相が形成され、沸騰が始まる。初期の沸騰による熱伝達は核沸騰と呼ばれ、伝熱面の個々の点から独立に蒸気泡が発生し、伝熱面の温度上昇に伴って熱流束が上昇していく。しかし、熱負荷が増大して伝熱面の温度がさらに高くなると熱流束は極大値に達し、熱伝達特性の低下する遷移沸騰領域に入る。この状態では、伝熱面が部分的に沸騰蒸気で覆われ、液体への熱流束が低下するために、伝熱面の温度上昇が促進される。その後、伝熱面の全面を沸騰蒸気が覆い、その蒸気膜と液体との接触面から直接に沸騰を行う膜沸騰と呼ばれる領域に入る。膜沸騰領域では熱伝達特性は改善し、熱流束は再び上昇する。


<登録年月> 2010年12月

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