国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication 1(1958年)に示されている概念の一つ。被ばく線量の管理は通常は個人に対して行われるが、ある集団のある期間についての合計線量が集団内の次世代に影響を及ぼすことを想定し、この集団の平均線量を遺伝線量と定義している。ICRPの上記勧告では、最大許容遺伝線量として30年間について5レム(50mSv)という値が示唆された。この示唆は個人に対する最大許容線量の勧告より軽い意味と解釈される。なお、現在は最大許容遺伝線量という用語は使われていない。「最大許容」という概念は「限度」に置き換えられ、また、遺伝的影響のような確率的影響には、受けた放射線量と影響発現の間にしきい値を持たない線量効果関係があるという仮定を置いた上で、集団被ばくの線量限度に対してもリスクと便益とのバランスに基づいた概念を採用するようになった。