高温の金属ジルコニウムと水との反応。反応式はZr+2H2O → ZrO2+4Hであり、ジルコニウムは酸化物となり、水は分解されて水素が生成する。軽水炉の燃料被覆管にはジルコニウム合金(ジルカロイ)が用いられているため、冷却材喪失事故などで炉心が高温になると、この反応が起こって水素が発生する。多量の水素が発生すると、原子炉建屋内に爆鳴気が生ずる可能性があり、何らかの原因で引火すると爆発が起きる。また、酸化したジルカロイ被覆管は脆化して延性を失うため、高温下で内圧が高まると亀裂が生じ、やがて破裂に至る。なお、水分解で生まれた水素も被覆管と反応して水素化ジルコニウムが生成し、これも被覆管の脆化の原因となる。このように、ジルコニウム−水反応は冷却材喪失事故などの発生時に原子炉プラントに深刻な損傷を与える可能性があり、これを緩和または防止するために、工学的安全施設(非常用炉心冷却系、格納容器及び格納容器雰囲気浄化系統)が設置されるとともに、燃料被覆管の酸化厚さ、原子炉格納容器内の水素量に対して規制値が設けられている。