北投石(HokutoLite)は、BaとPbの硫酸塩から成る固溶体(Ba,Pb)SO4で、少量のSr、Ca、Feおよび微量の放射性元素Raを含む鉱物である。鉛の多い褐色の層とラジウムを含む白色の層が交互に重なる縞模様が見られ、蛍光と燐光を発生する。北投石は世界で台湾の北投温泉と日本の秋田県玉川温泉でのみ存在する鉱物で、日本の特別天然記念物となっている。北投石は明治39年(1906)に岡本要八郎によって台湾の北投温泉で発見された。玉川温泉の北投石は、大正11年(1922)に天然記念物に指定されている。玉川温泉の鉱物はラジウム等を含み、放射性を持つ台湾の北投温泉の北投石と同等の鉱物とされた。その後に日本では特別天然記念物に指定されている。北投石ではRaが普通の土壌に比べ数千倍も濃縮されていることなどから、玉川温泉は放射能泉(ラジウム温泉)としても有名であり、観光客に加え、湯治、岩盤浴などに利用されている。放射能温泉は、現在、低線量放射線被ばくに関連して放射線ホルミシスの学術的観点からも興味が持たれている。