ストロンチウム90

ストロンチウム90 すとろんちうむきゅうじゅう

 ストロンチウムの同位体の一つで質量数90のもの。天然に存在する安定同位体よりも中性子数が多い不安定な核を持ち、β壊変をする放射性同位体である。半減期28.8年でイットリウム90(90Yになるが、これも中性子過剰な不安定核であり、半減期64時間でさらにβ壊変をして安定核のジルコニウム90(90Zr)になる。1gの90Srは5.1兆ベクレルの放射能をもつが、引き続いて90Yがβ壊変をするため、実際の放射能強度はこの2倍となる。天然にはほとんど存在せず、235Uの核分裂に際して、いわゆる核分裂生成物(FP:Fission Product)として生成する。1核分裂当たりの生成量である核分裂収率(FY:Fission Yield)は0.074%ときわめて小さいが、クリプトン(90Kr)、ルビジウム (90mRb)、臭素(90Br)が短い半減期でβ壊変して90Srに変わるため、総合的に3.5%程度のFYとなる。人体に入ると大部分が骨髄などに集まって造血器官を侵すため、核分裂生成物の中で注目される核種である。ただし、揮発性の強いFPと異なって原子力発電所の事故でも外部放出されにくく、現在自然界にあるほとんどは過去の原水爆実験で発生した降下物の残りである。


<登録年月> 2011年12月

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