ディープ・エコロジー(Deep Ecology)は環境に対する義務論の背景として存在する考え方の代表例の一つである。一般に言われている「エコロジー」をさらに深めた考え方と理解できる。ディープ・エコロジーは一般的な世界観と異なる独自の世界観に基づく。第二次世界大戦後に先進国が急激に経済発展していく過程で引き起こしてきた公害や環境破壊を憂慮する中で生まれてきた自然中心主義的考えの総体であり、欧米における環境保護運動の理論的な支柱になっている。人間活動について、これまで経済学の中で軽視されてきた倫理的社会的精神的側面を強調している。ディープ・エコロジーの基本的視点は、人間中心ではなく生物中心、成長のない定常経済志向、地球資源の有限性認識、高度な資本集約的技術ではなくシンプルな適正技術による問題解決、生物的多様性のみならず文化的多様性の尊重、中央集権でなく地方分権、伝統技術の活用、感性、創造性の重視などである。本質的にラジカルな考え方である。