５℃以下の低温でも増殖できる低温細菌の一種である。通常、エルシニア属の細菌で食中毒発生の原因となるのは、エルシニア・エンテロコリチカ（Yersinia enterocolitica）である。エルシニア属には、エンテロコリチカのほか、急性胃腸炎症状の原因となるエルシニア・シュードツベルクローシス（偽結核菌）、ペスト菌等が属している。エンテロコリチカの日本での発見は1972年で、ヒトの腸炎から分離された。米国では1939年に小児の腸炎から、欧州では1949年にヒトの敗血症から発見されている。日本では1983年に旧厚生省によって食中毒菌に指定された。ブタ、イヌ、サルなどの哺乳類の腸管や自然環境中に分布しており、汚染飲食物やペットから経口感染する。食中毒の他、虫垂炎、腸管膜リンパ節炎、敗血症、結節性紅斑、関節炎などを起こす場合がある。３歳以下の乳幼児では胃腸炎型が多い。