インコネルはニッケルベースの合金であり、商品名である。ニッケル、クロム、モリブデン、ニオブ、鉄等を成分とし、組成比によって、インコネル600、同625、同718等がある。インコネル600はPWRの蒸気発生器伝熱管に用いられている。90年代前半までは、振止め金具部を除けば、熱処理をしないインコネル600(MA600)であった。最近では、インコネル600に熱処理(700℃近辺で約10時間加熱し、合金中に含まれている炭素を炭化物として析出させ、且つ、炭化物の近傍にクロム欠乏層が生じないようにする)を施したTT600合金が多用されたが、さらに、クロム量を増やして応力腐食割れ特性を改善したTT690合金が使用されつつある。また、応力腐食割れの感受性の低い材料の開発も進められ、新設プラントに採用されている。インコネルは応力腐食割れが起りにくい材料と考えられてきたが、BWR一次冷却系環境下でのSCCがみられるようになった。主たる材料要因は粒界近傍のクロム欠乏によるもので、ニオブを追加することにより溶接金属中の炭素を安定化させ応力腐食割れの発生を防止できることが分り、最近ではニオブを添加したインコネルを採用している。