エネルギー需給の将来的な変遷を定量的に描いたもので、いわゆる将来予測ではなく、社会が選択し得る一つの道筋を描いたという意味でシナリオという呼称が用いられる。国家レベル、地域レベル、あるいは世界レベルのエネルギー需給を対象とし、人口動向、経済成長、産業構造変化、技術進歩、生活様式の変化、価値観の変化などに関して定量的または定性的な前提条件を設定して作成される。通常は前提条件の異なる複数のシナリオが作成され、各シナリオの下でエネルギー環境問題や資源問題がどのように展開していくか、また、いかなる対策を採ることによってそうした問題をどの程度緩和することが可能になるかなどが検討される。このようにシナリオは思考実験を行うためのツールであり、将来を見通すことを目的とするものではないが、シナリオ作成の前提条件となる将来の経済規模や技術進歩の速度を設定する際には、その蓋然性について分析者が独自の判断を下す必要があるため、主観が排除されているわけではない。