生物は、生活の場すなわち生息環境から様々な物質を体内に取り込み、また排出を行って生長、繁殖している。放射性核種を含む各種の元素やいろいろな有機化合物などを生息環境より高い濃度で体内に蓄積することを「生物濃縮(biological accumulation)」と言う。この言葉はわが国においては、環境汚染との関連でよく使われるようになり、かつて化学工場から排出された水銀(Hg)の生物濃縮によって、水俣病などが発生し、世界的規模で生産・使用された有機塩素系農薬、特にDDTは、広くさまざまな野生生物に蓄積した結果、繁殖を阻害した。生物濃縮は生物による元素や化学物質などの濃縮を指すが、陸上生物より水生生物に対して用いられる場合が多く、生物濃縮の程度を表すために「濃縮係数(Concentration factor,CF)」という数値が最も普通に使用されており、たとえば放射性核種のCFは次の式で表される。 濃縮係数=生物中の放射性核種濃度/水中の放射性核種濃度