放射線影響のうち、被ばくした人の子孫に現れる影響を遺伝的影響(hereditary effects)という。一方、子孫に伝えられるか否かにかかわらず、体細胞と生殖細胞を問わず遺伝子突然変異あるいは染色体異常が生じることを遺伝学的影響(genetic effects)といい、区別して用いられる。遺伝的影響は生殖細胞に生じた非致死的な損傷が子孫に引き継がれる可能性があるため、しきい線量は存在しないと考えられており、その発生は動・植物実験によって明らかにされているが、遺伝子を構成しているDNAは人も実験動物も同じであるので、人にも放射線被ばくによる遺伝的影響が発生する可能性を仮定して、放射線防護の基準等が設定されている。人にもしきい線量なしに生じる可能性があるとされてきたが、最近、その見直しが行われている。