Wigner energy. 黒鉛を減速材とする原子炉においてウィグナー効果によって黒鉛の中に蓄積されるエネルギー。ウィグナー効果とは、高速中性子の照射によって結晶格子内の原子が正規の位置から移動して、物質の物理的または化学的性質が変化する現象である。このエネルギーは、黒鉛を300〜400℃で加熱すれば放出されるため、黒鉛減速炉では一定期間毎に黒鉛を加熱して、蓄積エネルギーを放出させる必要がある。英国ウィンズケール原子炉で1957年に発生した事故は、このエネルギーの放出作業において黒鉛を過熱させたことに起因し、炉心の温度が急上昇した。その結果、複数の燃料棒が溶融し、黒鉛の燃焼、火災が発生した。炉心冷却に伴い、放射性核種が大気中に放出された。