<本文>
1.エネルギーに関係した指標
国のエネルギー政策、企業の省エネルギー戦略等を検討・立案する際に、種々の指標が使われる。例えば、日本と世界を比較する際は
表1に示すような指標が役に立つ。これら指標は、種々の統計から作成される。人口等は国勢調査や戸籍・住民票の届出が基礎となった統計によって得られる。一般にエネルギーに関係した指標は、測定やモニターの読みからの集計だけから、作成されるものでなく、物量の移動等の統計等から、解析・評価を通して作成されるものである。それだからといって、抽象的なものではなく、物量(それが包含するエネルギー)の移動として具体的に把握されているのである。
一人当たりのエネルギーの消費量という指標は、国の豊かさとか、国の開発状況などの評価に役立つものである。例えば、1999年2月10日、虎ノ門パストラルにおいて開催された第34回地球環境問題懇談会において、「中国の環境問題と日本の企業との関係」に関し、「中国の都市化と環境問題の現状」という報告で、早稲田大学理工学総合研究センター講師・高偉俊氏は、都市化に関連する基本指標として、エネルギー指標、社会・経済指標、インフラ指標、交通・通信指標、環境指標を挙げ、エネルギー指標として、一人当り石炭消費量、一人当り原油消費量、一人当り生活用電力消費量を挙げている。
2.一人当たりの1次エネルギー消費
表2に世界の一人当り1次エネルギー消費を示す。この表の中で、世界平均は1971年の1.3石油換算トン/人から 2001年の1.5石油換算トン/人へと増加している。これに対して、ヨーロッパ、オセアニアのグループ及び日本は、1980年代以降一貫して2〜5石油換算トン/人の値を保持している。また、北米のグループは一貫して7〜9石油換算トン/人である。先進工業国といわれる所以である。これに対して、1石油換算トン/人以下の国・地域がある。これらは小数以下三桁の数字で表現されているが、0.3〜0.4石油換算トン/人以下の国々は、開発途上ではあるが、未開発要素が多いというべきであろう。0.5石油換算トン/人以上の値を持ち、近年、1石油換算トン/人に近づいている国は発展途上にある。これらの中間、1980年代頃から1石油換算トン/人を超え始めた国がある。これらは、新興工業国と呼ばれるグループである。厳密な分類は、他の指標を見ないと分からないが、大略このように観ることができる。
図1に新興工業国の1人当りエネルギー消費の推移を示す。
3.先進工業国におけるエネルギー消費
1973年と1979年の二度の
石油危機によって日本を始め米国、欧州各国などの先進工業国では、省エネルギーやエネルギー利用の効率化が進む一方、エネルギー多消費型産業から省エネルギー型産業への、いわゆる産業構造の転換が積極的に推進された。重厚長大型産業から、情報・サービスなどのソフト型産業のウェートが高まり、エネルギー消費量が相対的に減ったことによる。エネルギー消費量の多い鉄鋼、石油化学、紙パルプ産業などの産業のウェートが低下し、逆に、エネルギー消費の少ない金融、流通、サービス、運輸、民生などの比率が高まったことは、エネルギー全体の消費節約につながり、エネルギーのGDP原単位の減少をもたらした。一方、クリーンな電力の使いやすさに由来して、電力の利用が増加し、電化率が上昇している。民生部門のOA機器や家電機器の使用数の増加、家屋・事務所の床面積の増加、冷暖房機器の使用量の増加、自動車の数と走行距離の増加などによって、近年、エネルギー消費は増加傾向にある。また、これに伴う温室効果ガス排出量の増加が問題となっている。これらは、他の指標から状況を把握することができる。
4.開発途上国におけるエネルギー消費
開発途上国の中ではこれから工業化に進む段階にあり、生活水準の向上などと合わせて、一人当たりのエネルギー消費量は、先進工業国のピッチを大きく上回るスピードで増大する見込みである。工業化の進展は国内総生産量を増やすが、同時にエネルギーの急速な増大をもたらす。工業生産に必要なエネルギーの増大は、国民所得の向上によって生活関連エネルギーの増大をもたらす。人口が急増すれば、その効果はさらに拡大される。国として、エネルギー消費大国への道を進むことになる。中国及びインドは目下、石炭を1次エネルギーの主たる供給源としている。経済規模の拡大、及び環境問題による石炭使用の抑制の圧力で、海外からの石油、天然ガス調達が盛んになり、世界的な石油や天然ガスの逼迫が懸念される。これらの輸入が増大し、エネルギー需要工業化の進展が急ピッチで進むことが予想される。国連統計によると開発途上国には、世界人口の約4分の3の人々が住んでいるが、エネルギー消費量は全世界の約4分の1である。これらの国々では、今後、工業化の進展、経済の発展に伴い、エネルギー消費量の大幅な増加が予想される。
<図/表>
<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)
(2)日本エネルギー経済研究所エネギー計量分析センター(編):エネルギー経済統計要覧2004、省エネルギーセンター(2004年2月)
(3)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)